EP.2 お兄ちゃんは超テッペキ-3
「人のふりしたケダモノだよ、あいつは」
「家じゃ激しいんだ・・・なんかやらしー」
「後ろから襲ったりすんの?ひかりは俺のものだ、とか」
結局部室であっても全く集中出来ず、やる気は全て無駄話に注がれた。
せっかくの開放日を無意味に過ごしてしまい、時刻は門限の6時に近付いていたので仕方なく解散する事になった。
花、胡桃と別れて、ひかりは家路につく。
だが真っ直ぐ帰れば間違いなく兄がいるので、自宅とは正反対の方向に自転車を走らせた。
こういう時に限って寄りたい場所も特に思い付かない。
(描いてみたら、お兄ちゃん。きっと喜ぶよ)
花の言葉が頭を過る。
何気無く言っただけなのはひかりも分かっていたが、あまりいい気分では無かった。
あの変態に頼めば、間違いなくその場で身に付けているものを残らず剥くに違いない。
無駄にでかいあれを見せ付けて、動物の様に求愛してくる姿が容易に想像出来る。
「痛ぇ!」
急に前輪が何かにぶつかってしまった。
その障害物を見て、ひかりは血の気が一気に引いてしまう。
「いってぇなぁ、どこ見てんのよお姉ちゃん」
「あ・・・あ・・・」
あまり品の良くない金色に染まった髪、そり落とされた眉、
ひかりを捉える一重の目が獲物を睨む蛇の様に鋭い。
滲み出る迫力にひかりは、喉に異物を押し込まれた様に、声を出せなくなっていた。
「どうした?」
「おう、いつの間に引っ掛けたんだよ、そんな女」
異変を察知し、すぐ近くにいた仲間らしき不良達が集まってきた。
一人でも太刀打ち出来ないのに、更にもう2人いたなんて・・・
ひかりは今にも泣きそうなのを精一杯堪えた。
「知らねえ。座ってたら轢かれたんだよ」
「あらら〜そりゃいけないなぁ。どうする?」
「へえ、結構でかいじゃん」
胸元を凝視され思わず手で隠してしまう。
だがひかりのその反応が、不良達の本能に火を点けてしまった。
瞬く間に取り囲まれ、体を押さえ付けられた。
(た、たすけて・・・って、ちょっと前にも思ったっけ?)
その通りだが前回は閉じ込められていたので、他者が介入している今回とは状況が違う。
自分はこれからどうなるのだろう、と思ったその時・・・