冬の日の出来事。-3
「何怒ってんの?」
「別に!!」
「怒ってんじゃん」
「寒いだけ!!」
「ふぅん」
最悪だ、あたし。
何も知らないこいつに八つ当たりしてもしょうがないのに…
結局あたしと朋久は別行動でそれぞれ好きなコーナーを見て回った。
雑貨屋さんって好き。
見てるだけで楽しいし、可愛らしい商品に囲まれてると何だか癒される。
いつもならね。
今日はダメだ。
何を見てもイライラする。
朋久は何をあげるんだろうとか、まだ真剣に悩んで選んでるのかとか…。完全に嫉妬してるんだ、妹に。
「はぁ…」
今日何回目のため息だろ。
ため息をつくと幸せが逃げるって聞いたことがある。
だとしたらあたしの幸せはもう手の届かない遥か彼方に逃走してしまってるに違いない。
店内の所々に飾られてるサンタクロースの置物を思わず睨んだ。
分かってます、どうせあたしのとこには来ないんでしょ?
来るのはニヤニヤしたサンタ面の男ばっか。断るのがめんどくさくてそのまま付き合ったりした。
朋久みたいになりたくなかったから。
実るあてのない片思いに何年も費やすなんてできない。
結果これ。ほんとに来てほしいサンタはいつまでたってもあたしの前に現れない。
もうやだな…
顔を上げて店内を見回すと、朋久がレジで商品を受け取ってる姿が見えた。
そっか、プレゼント決まったんだ。
無駄なのに。
全部全部、今まで好きでいた年月も今プレゼントを選ぶのに費やした時間もお金も全部無駄。
そんな気持ち、少しも届かないのに――…
「お待たせ」
「…」
笑顔にカチンときた。
何も知らないくせに。
あたしがどれだけ悩んでるのかも知らないくせに。
これから地獄に落ちる事も知らないくせに――…!
「おい、つぼみ」
「帰るよ」
「え、でもこれ」
早足でお店を出ると、まるで小さな子供のように朋久も後について来る。
「寒いのに付き合わせて悪かったな、でさ―」
「いつまで続けるの?」
「あ?」
「あんたはいつまであの子を好きでいるの?」
「あの子…、つむぎ?そりゃつむぎが俺を好きになるまで」
「ならないよ」
「そんなの分かんねぇじゃん」
「分かるよ」
「いや、言い切るなよ」
「分かるもん…」
風を切るように歩いていた足を止めて、くるりと振り返った。
態度の悪いあたしに腹を立てるわけでもなく、むしろ心配そうにあたしを見てる。