サイレント・イブ-9
「ねぇ見て、雪よ。」
暗くなった窓の外には静かな雪が舞っていた。
「ねぇ、本堂に行ってみない?
小さいけどお庭があって綺麗よ。
お墓もあるけど…」
ストーブをつけたけど、二人っきりでは広い本堂はやっぱり肌寒くて私のアソコはまだ痛かった。
でも、宮沢と結ばれた跡だと思うと痛いし寒いけど暖かい。
「なんかロマンチックだよね。
お寺に降る雪も…」
「私はここで生まれたから普通の景色だけど、何かやっぱり違って見えるなぁ…
私、お寺の娘だけどさぁ…
初めての時はクリスマスイブに好きな人にあげるのが夢だったのよ。」
「なってくれるよね…俺の彼女に。」
「いいの?…お寺の娘よ。
でも心配しないで、ここはお兄ちゃんが継ぐから頭剃らなくてもいいわよ。」
「俺の叔父は葬儀屋なんだ…
時々だけど喪服着て駆り出されたりもするんだ。」
2010年クリスマスイブ…
私たちは寄り添って小指を絡めながら、境内に静かに白く舞い落ちる雪を眺めていた。