娘の告白-3
「小夜の方から俺と話そうとしてきたんだ。いい加減、父親として目を覚まさなきゃと思ってな・・・」
小夜は、銀太郎に・・・父親に抱き付いた。
溢れてくる涙を拭いも、隠しもせず、自分の気持ちに正直になっていた。
「おとうさぁん、ずっと、わたし、こうしたかったの」
「・・・そうか」
「もっと早くこうすれば良かったのに・・・」
涙でくしゃくしゃになった顔に、もう朝美の面影は無い。
妻との思い出も、妻自身の事も、この先忘れはしない。
だが、抱き締めている小夜に妻を重ねるのはもう止めなくてはならない−
小夜は娘、自分のかけがえのない娘なのだから・・・
「おとぉさぁん・・・おとぉさぁぁあん・・・」
子供の様に泣きじゃくる小夜を、銀太郎は精一杯強く抱き締めるのだった。
小夜は、泣いた。泣き続けた。まるで、生まれたばかりの、赤ん坊の様に−
まるで呼吸のごとく嗚咽を繰り返し、銀太郎の胸に顔を押し付けて泣き続けた。
「・・・あ、ごめん、取り込み中だった?」
そこに怜が入ってきた。
珍しく開ける前に確認したが返事が無いので、開けたらこの通りだった。
「れ、怜?!」
ぐす、と鼻をすする小夜の目が真っ赤なのを見て、思わず驚いてしまう。
「見ないでっ!あんたには見られたくない!」
まるで小動物の様に父親の体に隠れようとする小夜。
小夜は当然ながら、銀太郎も何も言わなかったが、怜は二人の距離が一気に縮まったのを察する。
「よしよし、やっと素直になれたね。偉いよお姉ちゃん」
「撫でるな!こらっ、やめなさい!」
顔を隠しながら必死で頭を撫でる怜の手を叩く小夜を見て、銀太郎は自然と口元が綻んでいた。
「なんで来たのよ、ここに」
「お父さんと約束があるから。ね、お父さん」
銀太郎は静かに顎を引いて、小夜を見つめる。
「¨仕事¨なんだ。これから・・・な」
寄りによって自分はそのタイミングで来てしまったのか、と小夜は少し後悔した。
銀太郎から離れ、涙で濡れた目を擦る。
「どんなポーズにしよっか。色々考えてきたんだ」
「そいつは楽しみだ」
怜に擦り寄られ楽しそうに微笑む銀太郎が、涙を拭ったばかりの目に写る。
¨・・・ズキン¨
急に胸に痛みを感じたが、すぐに治まる。
しかし、何やら塊の様なものが奥に残ったままだった。