彩りの荒野-3
… … … …
「こんな事をするような男だと思われても構わない…
僕は君の寂しさが分かる存在でありたいんだ。」
助手席の麻美はしばらく黙ったまま俯いていたが
「行きましょうか…」
そう言って自分から席を立って車を降りた。
結婚する前にラブホテルという場所に妻と何度か来た事はあった。
互いに実家住まいだったあの頃はデートの締めくくりはいつもラブホテルだった。
今思い出すべき事ではないのかも知れない。
しかし、この十数年の間にこういった場所もずいぶん変わったような気がしたのだ。
…何というのか内装が殺風景なほどシンプルに感じられた。
思えば娘が学校に上がってからというもの妻との交渉もほとんどないといえる。
最後にあったのは去年の事だか今年中の事だかすらはっきりしない。
それでも円満ではある。
子供を授かると夫婦は別の関係へと変化するものだろうか?
もちろん、それが理由だなんて卑怯な事は言わない。
私は麻美をこの胸に抱きたかったのだ。
そうしてその殺風景な部屋で麻美は身につけているすべてのものを脱ぎ捨てるとベッドの中へと潜り込んだのだった。
それはまるで映画で見た昔の女の仕草のようにも思えた。
礼儀正しく思いやりを持つ麻美は若くして、あるいは古風な女なのかも知れない。
私もすぐさま着ている物を脱いで彼女の後を追う。
それから私たちは欲情という寂しさを肌のぬくもりにかえて抱き合ったのだ。
若い女の乳房というものは横たわっていてさえピンと上を向いている。
下腹が弛み始めた私の肉体とは違い、体の線に張りがあるのだ。
貪りついてしまいたいような欲望を抑えて、私はその白い乳房を優しく舌でなどり吸いついた。
麻美は眉を寄せてせつない表情で声にならない熱い吐息を漏らしていた。
私のような男でも若い麻美を慰める事はできるのだ。
気をよくして唇に柔らかな張りを味わいながら濡れた割れ目に舌を忍ばせる。
そこは若い女の匂いがした。
そのしずくが彼女の体が流す涙であるならば、私は一滴残らず拭い去ってやりたいと思った。
親子というほどではないにしても、それに近いほど歳の離れた女の匂いに恍惚とするほど溺れたそのひとときを私はいつまでも脳裏に焼き付けておこうとした。
両側に広がる二枚の薄い襞を舌と唇で交互に愛撫して、その中心を舌先で下から上へと刺激すると彼女は肢体を震わせる。
私は妻の体しか知らないのだった。
妻以外の女が妻と同じ体の構造を持つ当たり前の事を不思議な気持ちで味わっていた。
そう…妻以外の女を抱いたのだ。