悔し涙が身に染みる……。-8
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戻ってきた四人を出迎えたのは、色とりどりのサワー。
先ほどまであったはずのソフトドリンクはほとんど下げられており、ご丁寧にストローが刺さっている。
「なに? どうしたの?」
「ん? これは和志君の命令。佐奈ちゃんと志保ちゃん、奈々子ちゃん、それに宏美ちゃんへの命令で、これを一気飲みしてね〜」
「危ないわ」
「大丈夫。オチンチンは隠してたし」
「そうじゃなくて、一気飲みよ」
「いやいや、一気じゃなくてもいいよ。とりあえず、俺が歌い終わるまでに飲んでくれたらそれでいいよ。ただし、皆が飲み終わらなかったらもう一回やり直しね」
そう言ってマイクを取る和志。彼は既に曲を選んでおり、室内にイントロが流れ始める。
「う〜、なんてこと〜」
佐奈は手に収まらない布をにぎにぎしながら呟く。宏美はソファに深く腰をおろすと、スカートを強く押える。
「それじゃあ証拠の品を見せてもらおうかな〜」
いやらしい笑いを浮かべる聡と忍。志保は文句の一言でも言おうとするが、
「じゃ〜ん! 奈々子のパンティで〜す!」
奈々子はシルクのパンツを見せびらかすかのように掲げると、続いて胸元におそろいのブラジャーを重ねる。
「今ノーブラのノーパンだよ〜」
そしてくるっと後ろを向く。ブラウンのパンツはなだらかな表面を見せているが、彼女が腰を折ると、その生々しさが伝わってくる。
「うは、奈々子ちゃん、大胆だね〜。それじゃあ宏美は?」
「え? あたし? えと……」
スカートの彼女はおずおずとパンティとブラを右手に掲げる。
無地のブルーのそれは飾り気も無いもの。だが、恥じらいながら出されると、それはかなりぐっと来るものがあるらしく、男達の唾を飲む音がした。
「志保ちゃん?」
「はい! これでいいんでしょ」
ややキレ気味な志保は黒で縁取りされた黄色のブラとパンティを出す。さすがに一回点するようなサービスも無いが、それでも男達は満足した様子。
「えと、あの、これでいいですか?」
佐奈はオレンジの縞模様のパンティとスポーツブラを見せる。幼い雰囲気の残る彼女ならではのそれに、やはりご満悦の男性陣。ただし、栄治を除いて。
「ほらほら、早く飲まないと歌が終るぞ?」
BGMと化していた和志の歌声に、皆はっと気付く。
女子達は慌ててグラスを持ち、ぐっと煽る。
「ぶっ、げほ! げほ!」
その強いアルコール度数に佐奈が咳き込むようにする。
「どうしたの? 佐奈ちゃん」
「なんか、濃くないですか?」
「え? そうかな?」
忍はそれをちょこっと啜り、渋い顔になる。
「ホンとだ。なんでだろ? でもまあしょうがない。ささ、ゆっくりゆっくり……」
返されたそれを見つめる佐奈。グラスには赤い色のカクテルがあり、カシスの甘い香りが漂う。
「うう……」
覚悟を決めてのみ始める彼女。鼻につんとくるアルコールの臭い。飲み下すごとに喉の奥が熱くなり、目の前がくらくらしてくる。
もともとそこまでお酒の強くない彼女は、それを半分まで飲む頃には顔を真っ赤にさせていた。
「おお、佐奈ちゃん色っぽい。急に大人っぽくなったね?」
「うぅ、ほんとですか?」
グラスを置きながら聡のほうを見る彼女。表情は意外にも笑っていた。
「うう、飲み干した……」
がたんとグラスを置くのは宏美。酒には強い彼女だが、やはりアルコールの分量が間違っているらしく、頭をふるっとさせる。