#01 邂逅-8
「――佐倉さ〜ん。こっれから、ヒマ?」
「ああ?誰だよ、てめぇ?」
「ごめんごめん。俺、二年の高崎(タカサキ)――知ってっかな?」
放課後、四時限目以降はちゃんと出席した私は靴を履き替え、校舎を出たところで三人組の男に声を掛けられた。
面識はなかったが、『二年の高崎』には聞き覚えがある。軟派で有名な男だ。そして、確か親父が県会議員かなんかで、家が金持ち――ウチと似てなくもない。
高崎を含めた三人とも、身長は男子の平均くらいだったが、猫背で少し小さく見える。明らかに人工的に焼いた肌に金髪や銀髪で一人は前髪にピンクのメッシュを入れていた。
はっきり言おう――三人とも同じ人間に見えた。
他の二人も名乗っていたが覚えるのも面倒なので高崎一号、二号、三号と心の中で呼ぶことにする。
一号が本人、二号が銀髪、三号がメッシュだ。
一号に続き、二号が口を開けた。
「噂は聞いてるよ〜、佐倉ちゃ〜ん。でも、噂以上に可愛いね」
「なにソレ?ナンパのつもり?普通にキモイぜ?」
「ぅぐ――」
私はこういった軽薄な手合いが嫌いだ。
実はまぁ、私はモテる。母方の遺伝のせいだろう、美少女――とは言わないが、そこそこの顔立ちはしている、と思う。
肌をちゃんと手入しているし、眉や産毛も抜いている。睫毛は細くて長いし、気の強そうな目も……まぁ、好きなヤツは好きなんだろう。鼻筋も通っているし、唇も紅を塗っている。
口紅は校則違反らしいが、でも、薄く化粧をしてきている奴らはたくさんおり、先公どもも私だけを咎めることもできないのだろう。
ともかく、『不良』ってレッテルの効力もあってか尻軽な印象が持たれやすいようで、こういうのにしょっちゅう、声をかけられるのだった。
一年の連中は、いまみたいな返答一つで切り捨てていくうちに手を出そうとする奴らも減っていったが、学年を隔てるとまだまだのようだ。
「そんなこと言わずに〜、どう?俺らと遊ばない?」
「あ・そ・ば・な・い。キモイ、なんか臭い、近寄んな」
「ぅ……いや、良いじゃん?どうせ、帰ったって――」
うぇ……。最悪だ。超しつけぇ。
ここは一発、痛い目にでもあってもらうか?一応はこういうバカ避けのために合気の嗜みがある。昔取ったなんちゃら、ってヤツだ。男三人相手でもなんとかなるだろう。
そんなことを思っていると第三者の声が割り込んできた。
しかし、私にとってはありがたくもない、助け舟ですらなかった。