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やさぐれ娘は屋上で笑う
【学園物 恋愛小説】

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#01  邂逅-5

「……なんだよ?」

「ライター……切れたのかい?」



岐島が、やはり無表情ながらも無駄に爽やかな声で訊ねてきた。

この発見も私には予想外だった。

というのも、この岐島という男、私と違う意味で、クラスで浮いており、話したのが初めてだったのだ。

私だけでなく、クラスの人間のほとんどがコイツとまともな会話をしたことがないだろう。

いっつも、教室の窓際、最後尾(いわゆる不良席なのだが、出席番号順の関係でたまたま、岐島がその席に決まったのだ)に腰掛け、黙々と校門のところに建った銅像のように何かしらの本を読んでいるのだ。

何度か、若干の好奇心に駆られて観察したことがあったが、それはハードカバーの小説だったり、ライトノベルだったり、少年漫画だったり、少女マンガだったり……。一度、辞書を読んでいる姿までも目撃したことがある。

活字ならば、なんでもいいのか、この男は?

――それはさておき、この岐島仙山がクラスでその優秀さと奇行、社交性のなさで『孤高』のレッテルが貼られているのは間違いがない。

というか、外見からして陰鬱そうだ。

男のクセに私なんかよりもよっぽど毛質の良い艶やかな黒髪を肩口まで伸ばしており、身長は高め。私が百六十ちょっとだから、目測でも、きっと百八十は優にあるだろう。

色白で、細身、そのくせ太い眉に猛禽類のような鋭い双眸を持っていた。鼻は高く、唇は薄く、けれど紅い。

辛気臭さが漂う、陰気な男である。

そんな男との(おそらく)ファーストコンタクトに私は内心、ビクつきながらも精一杯、平静を努めた。



「あ、ああ、切れやがった。くそっ――これじゃ、吸えねぇじゃんかよ」

「きみは、タバコを吸うのか?」

「はっ――。止めろとかなんとか説教する気じゃねぇよな?んな、面倒なことをやんなら、最初っから先公に言え」

「いいや、別段、そんなわけじゃないよ。きみの嗜好をとやかく言う権利は俺にはないからね」

「だったら……なんの用だよ?」

「――。使うかい?」



そう言って岐島がベルトにくくり付けたポーチから取り出したのはマッチだった。

箱の表面にはなんか書いてあったが、ほとんど落書きのような筆記体だったため、解読を放棄した……が、飲み屋か、クラブの宣伝マッチだろう。

なんで、こんなモンをコイツが持ってるんだよ?

私は猜疑心を込めて学校でも有数の優等生を見つめたが、まぁ、ありがたく火は拝借することにした。ソレはソレ、コレはコレ――いい言葉だ。


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