#01 邂逅-14
「早速ですが、高崎正人君。きみをこのクラブ――『パブリック・シークレッツ』の会員から除名します。オーナー権限でね」
「ぁ――んなっ?」
「……ご不満ですか?」
「不満だぁ?俺を除名だと?やってみろよ。親父が黙って――」
「高崎正幸氏にはすでに了解を取り付けています。氏曰く、STCのご令嬢に手を出すようなバカはもう、知らん――とのことだそうで……」
「お、親父が……?」
高崎の家にしてみれば、ウチ――STC社長にして、その株の七割を保有する佐倉家とは仲良くしていたいのだろう。
そりゃ、県会議員にとっちゃ、地元の大企業を敵に回したくはないよな。
しかし、どうやって私の素性を知ったんだ、こいつ?
そんな私の疑惑の視線にも男はにんまりと笑うだけだった。
「ここでの数々の――まぁ、行為をもみ消していたのは高崎氏ですからね。ですが、今回はババを引いてしましました。それでは、お客様。即時にご退出を。またのご利用をご遠慮願います」
男はその柔和な笑みは崩すことなく、高崎へと告げた。
茫然自失とする高崎(一号)をよそに二号と三号はいきり立つ。
んまぁ、一号とは違い、金すらないただのチンピラだ、空気の一つも読めないのだろう。
「っざけんな、おっさん!マサにそんな態度とって、本気かっ?こんな店、潰されちまうぞっ?」
「そうだ!謝れよ――土下座だ、土下座!」
いままでの話しを聞いていなかったのか、聞いていてはいたが理解する脳はないのだろう、はやし立てる二号、三号へ男が笑みを消し、目を針のように細めて、打って変わって恐ろしい声色で言った。
「――なんだと、小童?」
「っ!?」
「……。ふぅ……もう、二度とお目にかかることはないとは思いますが、後学のためにお聞きください。高崎君――こういう低俗な輩とはお付き合いされないことをお勧めします」
「んだと、このクソジジイ!」
「いまの、よくわかんねぇけど俺らを馬鹿にしたろ?ああっ?」
二号は私の両手を話し、束縛を解くと三号と共に男へと跳びかかった。
確かに台詞は『低俗』だが、身体能力、戦闘能力は高いコンビだ。
そんな二人の罵声にもピクリとも表情を変えずに男は呟いた。