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葉月真琴の事件慕〜欅ホール殺人事件
【推理 推理小説】

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葉月真琴の事件慕〜欅ホール殺人事件-30

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 喫茶室へ戻るころにはもう日が傾き始め、西の空は赤く染まっていた。
 パトカーが相変わらず止まっているせいか、人だかりもみえる。
 このまま正面から帰るとなると、今日の出演者である真帆が何かと奇異の目で見られることが予想出来る。それはあまり気分の良いものでもない。それならと非常口から外に出ようとなったらしい。
 だが、今すぐ帰るということに対して真帆はまだ抵抗があるらしく、歩が遅い。
「由真さんたちにも挨拶したい……」
 非常口を前にして、ようやく観念したのか真帆はそう言う。
「じゃあ、僕が言ってきますよ……」
「ダメ。またなんか無駄話して道草食うから。あたしが行ってくる」
 澪は真琴の首根っこを捕まえて非常口に向かわせる。そして非常階段のほうへと入ろうとして……。
「澪、そこはダメ!」
 慌てた真琴に呼び止められる澪。すんでのところでドアは開かなかったが、澪もようやくそれを理解する。
「あはは、行ってきます!」
 そういって向こう側にある上手側への非常階段へと向かう澪。
「まったく澪ってば、そそっかしいんだから……」
 梓はぷりぷりしながら、真帆と非常階段のドアとの間に立つ。
「ポン助……」
 真帆が力なくそう言うので、真琴は彼女に振り返る。
「なんですか? 真帆さん……」
「もう、ポン助はしゃべらなくていいの」
 そう言って彼の頬を突く真帆。
 梓は複雑な表情でそのやり取りを見つめるが、今は彼女の自由にさせてあげようと見て見ぬふりをする……が、
「あれ? ねぇ、真琴君、あれってば……」
 非常口の向こう、駐車場には車があり、見知った男が居る。
「なになに? あっ……あの人達……」
 今朝の迷惑なファンが未だ駐車場にたむろしているのが見えた。
「参ったわね。前門の人だかり、後門のストーカーって奴かしら……」
 梓は癖なのか親指の爪を噛む。
「お待たせ……。磯川さんはまだ少し残らないといけないみたいで、真帆さんによろしくだってさ。何してるの?」
「うん、それがまたあの人達が居るみたいなんだ……」
「え? 嘘……」
 澪も言われるままに身を乗り出し、すぐに嫌そうな表情になる。
「まったく何とかならないのかしら……? ね、真琴、あんた男の子なんだから、しっかり守りなさいよ。ボディガードよ、ボディガード……」
「えと……、一緒に帰るよりも僕に考えがあるんだ……」
「何?」
「それはね……」
 真琴の提案に三人は耳を傾けたあと、澪の嫌そうな声と梓と真帆の楽しそうな頷く声がした……。


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