出会い-2
その話を聞いた週の休日、買い物で街を歩いていると、偶然にも噂の園部が人待ち顔でベンチに座っていた。
そこには数人の似たような少年や少し派手目の少女がそれぞれに何かを待っているかのように点々と立っている。
しばらくして中年の男性が園部に声をかけきた。
何かやり取りをしてるような動きを見せかたと思うと、腕を組んで軽やかにホテル街へと消えていった。
「君、いくら?」
いきなり背後で低い声が耳に響き、驚きのあまり振り返りもせず全力でその場を立ち去ってしまった。
息を弾ませて家への電車に乗り込んで気持ちを落ち着かせる。
今夜行こう。
すでに決心が付いていた。
その日の夜、大きな袋を抱えて帽子にマスクという怪しげない姿で駅の女子トイレに入り、すぐさまロリータファッションに着替えて、ウィッグをかぶり化粧も整え例の場所へと向かった。
さすがに夜は待ち人も多く、それを物色する人も沢山いた。
交渉が成立しないとまた別の子へ。
ここでは法律は存在していないみたいに感じる。
昼間に園部が座っていたベンチがちょうど空いていたのでそこに座って携帯をいじっているフリをしていた。
でも心臓の音が耳に響くくらい緊張していて携帯画面など見ている余裕はない。
二十分ほどして、少し気持ちも落ち着いてきた頃足元に黒い革靴が自分の前に止まった。
来た!
でも怖くて顔を上げられない。
頭の上から声が聞こえた。
「君は、お昼の子だね?」
「・・・え?」
思いがけない言葉に咄嗟に上を向く。
後ろの外灯が逆光になって良く顔が見えないが、整えられた髪に縁無しのメガネからどこと無く上品な空気を感じ取れた。
「あ・・・あの・・・・」
「君は見ない顔だね。初めて?」
「は、はい。初めて・・・です」
「そう。ならここのシステムもよくわからないね」
「すみません」
「いや。いいんだよ。教えてあげるから」
「ありがとうございます」
立ち上がってぺこりとお辞儀をすると、眼鏡の奥の瞳が少し揺るんだ様に見えた。
「基本の金額交渉はデートなら一万、フェラなら三万、本番は五万って形でみんなやってるかな。あとは交渉次第」
「あ・・・でも僕そういうのも経験が無くて上手く出来るかわからないんですけど・・・」
フフフと男性は笑って僕の耳元まで口を寄せた。
熱い息が首をくすぐる。