投稿小説が全て無料で読める書けるPiPi's World

アップルパイ
【その他 恋愛小説】

アップルパイの最初へ アップルパイ 2 アップルパイ 4 アップルパイの最後へ

アップルパイ-3

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

学校の帰り、本屋に飛び込んで料理本を買ってきた。
そして材料をスーパーで買い込み、作ってみたってわけだ。

「開けるよ・・・おっいい匂い!期待できそうじゃん」

オーブンの中から焼き上がったアップルパイを取り出した。
こんがりと焼かれて濃い狐色のそれは、湯気と一緒に甘い匂いを出している。

「味見してみるか」

包丁を入れると、サクッと生地に切れ込む感触が気持ち良かった。
ケーキを切るみたいに切れ目を入れて、欠片を切り出して口に運ぶ。

「・・・あれ?」

我ながら、旨い。売ってるのより旨いんじゃないか?
姉ちゃんも勝手に切って食ってたけど、目をぱちぱちさせて俺を見ていた。

「あんた、本当に初めて?今まで作ったことないの?」
「初めてだよ、だから本見ながらやってたじゃないか」
「いい、これいいわ。私より上手じゃないかな」

姉ちゃんに誉められた。いける、間違いない。
あとはバイトの日を待つだけだ。もう作り方は覚えたぞ。

さゆりさんに振り向いてもらうんだ・・・!


「えっ?そりゃいいけど、どうしたんだ急に。お前面接で料理は出来ないって言ってたよな」
「食べてもらいたくなりまして・・・」
「へー、耕太君が作るんだ。楽しみにしてるね」

さゆりさんが期待してる・・・
よ、よし、頑張るぞ!
落ち着け、レシピはもう頭の中だ。出来ないはずがない。

俺は昨日の作り方を思い出しながら、用意してきた材料を並べた。
よし・・・やるぞ。さゆりさんに喜んでもらうんだ。


「手つきが固いな。大丈夫か?手伝ってやろうか」
「だ、大丈夫です!ちゃんと出来ます!」
「頑張って、耕太君」

変な汗を背中にかきながら、何とか完成させる事が出来た。
何だか家で作った物より色が変だが、気のせいだ。大丈夫だ。
包丁を入れた生地はサクッとせずしなびてる感じがしたが、それも気のせいだよな。

「さ、さあ、どうぞさゆりさん!あとマスターも」

「美味しそうだね」
「こら耕太、俺をついでみたいに言うな」

二人ともアップルパイを一口噛った。

さゆりさんは一瞬動きが止まったがすぐに口をもぐもぐさせ、飲み込んだ。
しかしマスターは苦い顔をして固まっている。

「面白い味だね」
「甘すぎるぞ・・・おい」

期待してた答えと違う。
さゆりさんは俺の頭を撫でてくれるはずだった、でも面白いだなんて!

試しに自分で食べてみたが・・・面白いどころか、口に入れたのが切なくなるくらい、変な感触だった。
生地がやけに水っぽく、りんごもマスターが言った通り甘ったるい。
サクサクどころか・・・饅頭じゃないか・・・



アップルパイの最初へ アップルパイ 2 アップルパイ 4 アップルパイの最後へ

名前変換フォーム

変換前の名前変換後の名前