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アップルパイ
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アップルパイ-2

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「さゆりちゃんってどんなお菓子が好きなの」

あれは昨夜、喫茶店が閉まる直前の、客も来なくなってのんびりしたお喋りタイムの時だった。
夕方は接客もこなすが基本的には食器洗い係で、カウンターの奥の洗い場に籠もってばかりだ。

あまり大きな店じゃなくてバイトも俺を含めて2人しかいない。だから、混雑する時は結構大変だったりする。

「何でも好きです、甘いんだったら」
「和菓子も洋菓子もいけるんだ」
「どっちかと言えば、洋菓子ですかね。コンビニのシュークリームとかよく食べます」

さゆりさんと普通に会話出来るマスターが羨ましかった。
そして、さゆりさんがよく買ってるシュークリームが俺の好きなやつで、とても嬉しくなった。

(好きなものが一緒なのかぁ・・・へへ、うへへへ)

にやけて手が早くなってしまい、危うく手元が滑って皿を落としそうになる。
いけねえ、やったら今月で三枚目だ。これ以上はやばい、給料が無くなるぞ。


「わっ?!ささ、さゆりさんっ?!」


いつからいたのか、さゆりさんが横から俺の顔を覗き込む様に見ている。

「どうした耕太君。なーんか楽しそうだね」
「そっそうですかね、普通ですけど・・・」

少しだけ染まった栗毛色の髪のせいか妙に大人っぽく見えて、とてもじゃないがまだ大学一年生には見えなかった。
姉ちゃんと同い年だと知った時にはかなり驚いたな。

「どうした耕太、背中が嬉しそうだぞ」
「やめて下さいよマスター。おっ俺は別に・・・」
「変なの。楽しそうにお皿洗いしてるなんて」

特にさゆりさんは意識してないんだろうが、いきなり近付かれると心臓が保たないよ。
シャンプーの匂いがしたが、すぐにさゆりさんはマスターの所に戻ってしまった。
そしてさっきの好きなお菓子の話を続けている。

「私、アップルパイ好きなんです」
「いいよね。お菓子の中でも作りやすいし」

アップルパイ・・・?
ああ、なるほど、りんごのお菓子か。
聞いたことはあるがどんな形か頭の中ではっきりイメージ出来ない。

料理音痴の俺が思い浮べるのは無理な話か。

作りやすい・・・のか・・・


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