喫茶店 daisy-2
「変な娘って思ったでしょ? 簡単に男のコを部屋に入れるなんてね」
「…………警戒心なさすぎ」
無防備に知らない男を部屋に入れて、シャワーは浴びるわ、寝こけるわ。あの変な女、やっぱり変だ。カイキは改めてそう思った。
「よねー。でも、ま、あの娘、強いからね」
「…強い…?」
「喧嘩。すごく強いわよ? ヘタに手を出したら、普通の男じゃ返り討ちね」
だから、手を出そうと思うな。そう釘を刺された気がした。
「で、カイキくんはいくつ?」
「…………」
「明希ちゃんと同じくらいだから、18くらい?」
「…………」
沈黙を守ったまま、カイキは差し出されたコーヒーに視線を落とした。
「これから行くとこある?」
湯来のそんな問いにも全く答えない。ただ、静かにコーヒーを見つめる。
「もし良かったら、ここの空いてる部屋使う?」
「…………アイツもアンタも変だ」
「あらあら。よく言われるわ。でも、私は明希ちゃんみたいにタダってことはないわよ?」
「?」
「見ての通り、この喫茶店は私一人で切り盛りしてるの。週末は明希ちゃんが手伝いに来てくれるんだけど、平日は学校も他のバイトもあるから無理でね。だ、か、ら、週休2日、お風呂とトイレ付き6畳間、3食付きの住み込みバイトしない? 勿論、門限も無いし、部屋とお店は別玄関だから干渉なし。どう?」
ニコニコ笑いながら、湯来はカイキに提案してきた。食と住を提供する代わりに労力を提供しろ、と。
「…………働いたことない」
「今日は1日見学してて? 見てたら、解るわ。厨房でもいいし、ウェイターでもいいしね」
カイキの中に見え隠れするやる気を見出だし、湯来は彼に優しく笑顔を向けた。