〈蠢く瞳・其の三〉-3
『…………何してる?』
有海「!!!!」
突然、後ろから男の声が聞こえたのに驚き、有海が慌てて振り返ると、そこには驚いた表情の田尻が立っていた。
有海「え!?……いや……あの……私………キャアッ!?」
目を丸く見開いたまま少し後ずさりした有海に、男達はいきなり後ろから飛び掛かり、力任せに部屋に引きずり込んだ。
『そこに縄あるだろ、早く持ってこい!!』
有海「え!?わ、私何も……ちょっと何よぉ!!」
『手をそのまま押さえてくれ!!離すなよ!!』
まだ理解出来ていない……このストッキングを被った異様な姿の男達が何者で、何故田尻がここにいて、この部屋がどんな場所なのか……未だ状況の分からぬ有海を、男達は手慣れた手つきで押さえ付け、麻縄を巻き付けていった。
有海「何よ!?もう離し……い!?嫌あぁぁ!!!」
今ようやく理解出来たが、もう遅かった。
絡められた縄は有海の身体の自由を奪い、痴態を晒させたままで拘束していた。
[胡坐(あぐら)縛り]
両手を後手に縛り、胸の上下に縄を回し、肩口から廻した縄を胸の下側の縄に絡め、その絡め縄が胸元でV字になるように胸肉を絞り上げる。
更に余り縄を肩口から伸ばし、胡坐状態の足首とふくらはぎに縄を絡め、もう片方の肩口から後手に極めてる縄に結わえる。
そして脚を吊っている縄を余り縄を巻き付けて束ねる。
後手で胡坐をかき、背中を丸めた状態の緊縛。
身動きの取れぬ〈達磨〉にされた有海を、男達は取り囲んで見下ろした。
『ほぉ……誰かと思えば、棚瀬有海ちゃんじゃないか……』
夏帆・有海「!!!!」
夏帆は我が耳を疑った。
仰向けに寝ている夏帆には、誰が捕らえられたのか見えてはいない。
だが、呼ばれた名前も、その声も、間違いなく有海のものだ。
有海もまた驚きを隠せなかった。
この男達は自分を知っている。
それも、良く知っているかのような態度だった。
不気味な男達に交じり、自分を見下ろす田尻……信じがたい光景が、有海の頭を混乱させていた。
有海「……た、田尻先生……あの人……何……?………誰なんですか…?」
部屋の中心に置かれた不気味な椅子に、股間の部分を切り取られたアンダースコートを履いた女性が縛り付けられている。
その真っ白なテニスウェアは、自分のと同じ物……その衣裳は排泄物や得体のしれぬ液体が付着し、汚らしい染みが至る所に付いていた。
その汚れ具合を見れば、かなりの長時間、その椅子に拘束されていたのが想像出来た。
呻き声とも泣き声ともつかぬ声を発てる少女……聞いた事のある声……信じたくない想像が、頭の中を回り始めた。