オカシな関係2-2
「あんたね、こういうのって作ろうと思ったら、同じのが大量にできるでしょ」
「あ。大丈夫だよ。生地はアイスボックスにしてるから。明日焼くだけ」
ご飯粒をとばしそうな勢いで答えた。
「…いーから。ご飯食べるか喋るかどっちかにしなさい…」
「あい」
クッキーはさくりと崩れてバターの風味が口にひろがった。
「おいしい?」
嬉しそうな、しっぽがあったら千切れるほど振ってるなって顔で涼ちゃんが笑う。
涼ちゃんのお菓子はどれも美味しいよ。
「…うん」
私は、それだけ言って笑った。
「よかった。俺、そうやって食べてくれんの初めて見た。嬉しいな」
コイツはいつも渡すばっかりで、あわただしく帰ってしまうから。
「なによう」
涼ちゃんが頬杖ついてじっと私をみていた。
「んふー。ちょっと幸せだなーと思って」
私は横を向いてコーヒーを飲んだ。
こっちが赤面しちゃうじゃないの。
そのまま、窓の外を眺めていると、また食べ始めたみたいで視線を感じなくなった。
食事の後、私は涼ちゃんの家に行った。
店の2階に住んでいて、裏口のカギを開けて階段を上った。
いつもすれ違うばかりでここへ来たのは初めてだ。
「これ、あげるね」
と、その裏口のカギを私の手のひらに載せた。
「え?でも」
「仕事中はあんまり、お構いできないかもだけどね。ちょっと顔見に来てくれると嬉しいな。勝手に入り浸ってくれてかまわないから。そうでもしないと、会えないからね」
ドアを開ける。
こざっぱりとした部屋だった。
学生の部屋みたいだ。
「へえ。キレイにしてんのね」
勉強机に本棚。そしてベッド。
私はベッドに座って辺りを見た。
専門書に雑誌。
机の上の本立てにはノート。
PCとオーディオセット。
「掃除したんだよ。ヘンなものは出てこない筈だけど、探さないでねー」
涼ちゃんも私の隣に座った。