枯れ落ちる葉、朱に染まる紅葉-4
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二次会の店は落ち着いた感じのショットバー。といっても、学生の出入りの多い安めの店。店内には洋楽が流れ、メニューは軽く飲めるものや甘めのもの、いかにも女の子受けしそうな名前のカクテルが並んでいる。
「とりあえずビールって店じゃないんだよな……、まあ皆、楽しく飲んでくれよ」
運ばれてきた色とりどりのカクテルを前に、夏雄は一人ウーロン茶をグラスで頼む。彼なりに先ほどのことを反省している態度らしい。席順もさつきの右は武彦、左は三年の竹川良子がおり、夏雄の隣は紀一と克也がガードしている。
武彦は運ばれてきたジンジャエールを見て、自分もソフトドリンクにすべきだったと後悔する。
「あ、気にしなくていいぞ、武彦。さっきは俺の酒癖の悪さが問題なわけだし、また酔っ払ってさつきちゃんに手を出したらたまんないからな。なんてな、わはははは……」
さきほどのひと悶着も、もう笑い話。武彦は「お言葉に甘えて、ゴチになります」とグラスを煽る。爽快な香りと炭酸の喉越しで、落ち込んでいた気持ちが軽くなる。
「でも、さつきさんと武彦君が付き合ってたなんて知らなかったなあ……」
「秘密にしてたってわけじゃないんだけど、改めて言うことでもないし……」
ピンクのカクテルにさくらんぼの乗ったグラスを口に含み、照れ隠しなのか手をぶんぶんとふるさつき。けれど、良子は浮いた話は逃さないとばかりに、芸能リポーターの真似をしてマイクを近づける仕草をする。
「いつから付き合いはじめたの? 去年から? もうふたりともそういう関係?」
「ええ、まぁ……」
意味深な微笑みを浮かべる良子に、さつきはしどろもどろ。質問者が夏雄から良子に代わったわけだが、女同士であることや、直接的な表現を使っていないせいか、強く断ることができない。
「そういえば、夏合宿はどうするんだ?」
そんな中、克也が話題を振る。彼のハイボールはそれほど減っておらず、ストローでくるくると氷を回していた。
「ん? まぁ、いつも通りかな? なあ、紀一」
「え? あ、はい。そうですね。まだちょっと……」
例年通りだと、複合運動施設である鬼瓦高原青年の家となるが、最近になってある事件が起こってしまったらしく、別の施設を検討中。これもやはり幹事は二年の仕事であり、武彦も準備を進めるべく、インターネットや情報誌で候補を探している。
まだ未決定部分が多いこともあり、話すことも、話せることもないのが現状だ。
「そうか、それなら早いところ探したほうがいい。三島も真柴も二年なんだから、しっかりとやってくれよ」
「はい」
「はい」
突然の説教に場の空気が下がる。確かにスケジュール合わせ、予算など調整の必要なことではあるが、飲み会の途中でするべき話ではなく、二次会のメンバーはしらけたように視線を外に向ける。
やがて、部員のグラスに空が増えてきた頃、二次会は盛り下がったまま、お開きとなった……。