枯れ落ちる葉、朱に染まる紅葉-2
「いい加減にしろよ。皆ひいてるってわかんねーのか?」
だが、克也は怯むことなく声を荒げる。二人の対峙に、楽しげに酒を飲んでいた部員達の空気も醒め始める。
普段は大人しく、裏方に回ることの多い克也の苛立ちは意外の一言。ただ、武彦にとって心強い。
「なんだよ。俺がさつきちゃんと仲良くしてるのがそんなに羨ましいか?」
「そういう問題じゃないだろ!」
「うるさいな。さつきちゃんはフリーなんだし、別にいいだろ? な〜、さつきちゃん」
猫撫で声でさつきに向き直る夏雄に、彼女は言いにくそうに言葉を濁す。
「いえ、それが、彼氏いるんで……」
「なに? だれ? うちの部員?」
「え、ええ……」
さつきは助けを求めるように武彦を見る。彼としてもこの場で堂々と名乗りだすべきと力んでいたが、久しぶりのアルコールのせいか、足腰に力が入らない。
「まさか克也じゃないよな?」
「違いますけど……」
「三年?」
「いえ、同級生で……」
「二年か。じゃあいいじゃん。後輩の彼女なら俺の彼女も同然だ。うむ、サークル内で親しきあることは良いことだ!」
「お前なぁ……」
独自の理論を展開する夏雄に克也は怒り心頭という様子で夏雄に近寄るが、その脇をずかずかと歩くのは……、
「さつきは俺の彼女だぁあああああっ!!!」
我慢が出来なくなった武彦はふらつく足取りで夏雄に近寄ると、その胸倉にめがけてこぶしを振るう。
「きゃぁ!」
「お、おい、武彦、やめろって!」
部員達の驚きの声、悲鳴が飛び交い、飲み会は騒然となった。