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枯れ落ちる葉、朱に染まる紅葉
【レイプ 官能小説】

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枯れ落ちる葉、朱に染まる紅葉-12

**――**

 午後の講義が終った頃、武彦は部室へと歩いていた。
 七月の後半は前期試験が詰まっている。それさえ終れば夏季休暇なわけだが、二年ともなると進級に必要な科目がいくつかあり、気が抜けない。
 去年までは気楽に構えていた武彦だが、バイトのシフトもやや少なめに調整し、過去問題集めに躍起になる。
 そんな折、紀一からのメールが届く。内容は過去問題有りとのことだった。
「ちわーっす。過去問もらいに来ました……」
 威勢よくドアを開けると、そこには先客がおり、良子と夏雄、紀一にさつきが仕分け作業をしていた。
「おお、よく来たな。まあ座れよ」
「あ、ああ……」
 でんと彼の前に投げられた紙の束こそ目的の過去問題であり、しっかりと答えも記入されていた。
「おぉ、これが……」
 武彦はしげしげと見つめたあと、二人に倣って仕分け始める。
 ………………。
 ひたすらに過去問題を仕分け、部員の数だけ綴じ直す。黙々と淡々とした作業なのだが、空気が重い。
 最初紀一がさつきの隣に座っていたが、気を利かせたのかわざわざ移動してくれる。昨日のことを考えれば確かにそうなのだが、居酒屋でのひと悶着と、もう一つの案件のせいで、武彦としてはどうしてもさつきの顔が見られない。さらに目の前には、相手である良子もちゃっかり居るのだ。
「なんだ? ケンカでもしたの?」
 先ほどから一言も口を利かないカップルに水を向ける夏雄。淡々とした作業に飽きてきたのか、その手を止めてペットボトルを呷る。
「……それを先輩が言いますか?」
 さつきの非難めいた言葉に頭を掻く夏雄。
「いやまぁ、昨日のことは俺も調子に乗りすぎたわけだし、酔ってのことだから大目に見てよ……」
 拝む倒す夏雄はいつもの調子の良い先輩。
「はは、まあ、俺も知らなかったぐらいだし、しょうがないっすよ」
 講義の兼ね合いでよく一緒にいる紀一のフォローに夏雄は「そうだぞ。悪いことしてるんじゃないし、隠すなよ」と開き直る始末。武彦としては「はぁ、そうっすね」と愛想笑いを返して何とかしのぐ程度だが、一方のさつきは苦い顔をしながら過去問題に向かっている。
「あ〜、で、さつきちゃんは仕事遅れなかった?」
「え? ああ、その、服が汚れちゃってて、結局バイト代わってもらいました……」
 しょんぼりした様子で「また洗濯しないと」と呟くさつきに、元気の無さはそのせいだと気付く。
「そうなんだ。まぁ、気を落すなよ」
 ようやく明るく声をかけることが出来たが、彼女はまだうつむいたままだった。
「良子先輩はどうでした? こいつに何かヘンなことされてませんよね?」
「え!?」
 紀一は笑いながらそう言うが、一瞬にして場が凍る。
「いや、そんな深い意味はないでしょ。冗談だって、冗談。つか、ただ送っただけでしょ?」
 間違いを引き当てたと感じた紀一は慌てて弁解するが、武彦の驚きの声が暗雲を呼び込む。
「そういや良子、お前レポート……」
「ああそうだ。ねぇ武彦君、もって来てくれた?」
「ああ、はい、えっと、鞄にっと……」
 汚れないように締まっておいたA4のレポートを取り出し、良子に渡す。
「ありがと。なんか篠塚ったら今日中に出さないと単位取り消しとか喚いてさ、助かったよ……」
「はぁ……、まぁ……」
 そして、再び凍りつく部室。
「ん? どうかしたの?」
 夏雄は名前の通り常夏のテンションで一同を見るが、武彦は引きつっており、紀一は額に手を当てている。さつきは相変わらず表情が見えないままで、良子はレポートを確かめている。
「いや、まぁ、なんだ……、先輩、昨日はすごく酔ってたんですよね……。だからだよな……」
「別に? 昨日も帰ってから家で少し飲んだよ」
 いまさらといえるフォローを始める紀一だが、良子はあっけなく打ち落とす。
 さらに言えば、武彦の恰好。昨日別れたときと同じ服装であり、襟元にのみこぼしらしき跡が見える。それはつまり、彼が家に帰っていない可能性を示すが、重要なのは、どこで一夜を過ごしたのか? その一点。
「すみません、ちょっと気分悪いんで、先に帰ります……」
「あ、おい、さつき……」
「ごめん、用があるならメールでして……」
 さつきはすくっと立ち上がると、荷物を片手に部室を出る。
 武彦もそれを追おうとしたが、痺れ始めた足が縺れ、そのまま床に這い蹲る。
「あちゃ〜」
 耳に残るのは紀一の声……。


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