寄り道-4
「いつもの道を変えて若槻と歩く道を選んだおかげで、何かが見えたんだ」
若槻はしばらく瞬きを繰り返していたが、急に笑いだした。
「はっきりしない言い方だなぁ。先生、ホントは良く分かってないんじゃないの?」
「ああ、分からん。先生だからって何でも知ってる訳では無いんでな」
「もしかして開き直ったの。はぁーあ、ダメだな先生。何のヒントにもならねえよ」
生徒の悩みに対して的確な助言が出来た、とは我ながら到底思えない。
寧ろ助けられたのは俺の方だ。
とても大事な事を思い出させてもらったよ。
俺が教師を志した理由、それは・・・
今の段階では正直よく分からないが、もしかしたら生徒と一緒に学ぶつもりだったのかもしれない。
いや、或いは、営業から教師に寄り道しただけなのかもしれない。
「先生腹減ったよ。なんか奢ってくれ」
「ちゃんとしたコーヒーを飲ませてくれたら、な」
考えてもはっきりした答えが出ない。
「しかし、男2人ってのもな。お前の代わりに女子高生なら楽しかったんだが」
「それ冗談じゃ無かったのかよ?」
「今度は本気だ」
「犯罪者!女子高生ばっか見てたんじゃ、大友先生と違って結婚できねえぞ」
「あの先生は噂だと弟にべったりらしいな。生徒が冗談で言ってたのを話半分に聞いただけだが」
俺はまだこれからも寄り道する必要があるみたいだ。
〜〜おしまい〜〜