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寄り道
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寄り道-1

校門をくぐって、歩き慣れた帰り道を昨日までと同じ様に辿っていく。
最近は忙しい時期では無いので比較的帰りが早いが、決して嬉しい事では無かった。

来る日も来る日も同じ事の繰り返しで退屈だ。
朝起きて満員電車に体を押し込め、駅から歩いて学校に来る。
決まり切った時間に合わせて仕事をして、昨日と同じ道を歩いて帰る・・・

何にも変化が無い。思い返せばずっと同じ景色しか見ていない。
日常を写真に写して並べてみても、何の変化もないだろう。
果ては行きと帰りの道を歩く歩幅まで全く変化が無く決まっているのか、という錯覚まで起こしそうになる。
俺は何故ここを選んだのか、最近では悩む事も無くなってしまった。
これからもずっと、あまり良くない意味で変わらない日々が続いていくのだろうか?


しかし、今日は昨日までとは違うものがあった。


「・・・いつまで連いてくるつもりだ?」


振り返るとそいつは電柱の影に隠れたが、明らかに体がはみ出て、隠れ切れていない。
しばらく隠れていたが、やがて自らそれに気付いたのか観念して姿を見せた。

「どもッス」

まるで友達に挨拶するみたいに片手を上げている。
整髪料で立たせた茶色い髪は針金の様に固められ、ボタンを全て外したブレザーがだらしなく開けっ放しになっていた。

「お前が男を追い掛ける趣味があったとは知らなかったぜ、若槻」
「意外と気付くの早かったっすね先生。後ろに目でもあるんすか?」
「そんなずりずり音立ててたら分かるだろ。お前、外でもそうなのか?」

若槻は、学校ではスニーカーの踵を潰しながら歩いてるので、俺以外の教師にもよく注意されていた。
その度に気をつけますよとへらへら笑っているので、人によっては更に怒られる事もある。

「何か用か」
「暇だから遊んでくんない?コーヒー飲もうよ」
「俺はお前の茶飲み友達じゃないぞ。他をあたってくれ」
「オレと先生の仲じゃん。いいだろ、ちょっとくらい付き合ってくんないかな」

何故わざわざ担任なんかと、と俺は首を傾げた。
若槻は、外見は不良の様で親しくない人間なら避ける雰囲気を出している。
しかし話してみると妙に人懐っこく、初対面とのギャップで一気に距離が近くなる生徒は少なくない。

教室以外でも色んな生徒と話してるのを良く見かけるので、友達には困らないタイプだと思っていた。
なので、考えてみたら一人で下校するのは珍しい。

(・・・もしかして、担任に相談したい事があるのか?)

直感だがそう感じた。

以前何度か生徒が一人で俺を訪ねてきた事があった。
流石に、下校中のところを追跡されたのは初めてだが・・・
何を相談したいのかは分からないが、いつもとどことなく様子が違うのは間違い無さそうだ。



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