生徒会へようこそ【MISSION4:幽霊の謎を解明せよ!】-10
「うおっ、宝いたのか!静か過ぎてもういないと思ってたぞ」
オッさんのイヤミにも何の反応を示さない。
おかしい…おかし過ぎる。天変地異が起こるかもしれない。
「寿絵瑠は…幽霊の正体を解明しようと思っていた。神坂があんなに怖がっていて、どうにかしてやりたいと思った」
宝さんはいつでも真っ直ぐだ。
困ってる人を助けてあげたい。その気持ちは僕も味わったから分かる。
きっと生徒委員会の誰よりも生徒委員会であることに、誇りを持ってる。
「オッさんに関わるなと言われても、見て見ぬふりなど出来ん。何よりもその気持ちが強かった」
今まで聞いたことも無いほどの暗い声。いつでも満ちている自信は消え去っているようだ。
「しかし、実際寿絵瑠は見た。そして目の前で消えた」
僕はやっと気付いた。
胸の前でギュッと握り締められている拳が小さく震えていた。
「解明出来ないから『幽霊』なのだな…。得体の知れないものは…怖いな」
真っ直ぐに僕を見る瞳は少し潤っていた。
宝さん、怖かったんだ。
いつも強気の宝さんに怖い物なんか無いと思ってたけど、宝さんだって普通の女の子なんだ。
目の前で人が消え、この暗闇も更に恐怖を掻き立てたのだろう。
「大丈夫だよ」
僕の口は勝手にそんなことを言っていた。
僕がここまできてもまだ怖いと感じないのは、心のどこかであの人は幽霊では無く、生身の人間だと思っているからだろう。
なぜそう思っているのかは分からない。
ただ、何かが引っかかってるんだ。
その『何か』も分からないんだけど…。
「大丈夫、僕が必ず正体を暴いてみせる」
「俺はもう関わんねぇ方がいいと思うんだけどな…」
オッさんに至っては怖いというより、面倒なことに関わりたくないというオーラがひしひしと伝わってくる。
全く…。生徒会が聞いて呆れる!
「僕に任せて」
宝さんに頷いてみせる。
怖がりの紅がわざわざ第4多目的室を訪れた。その勇気を買ってやる、という訳ではない。
ただ目の前の女の子が訳の分からないものにひどく怯えている。
それならば、その不安を少しでも取り除いてあげたい。
「えーと…何?」
潤んだ瞳で宝さんが片手を差し出してきた。
「…握って欲しい」
「は!?」
「え!?」
僕とオッさんの声は大廊下に反響した。