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コンビニ草紙
【理想の恋愛 恋愛小説】

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コンビニ草紙 第二十壱話-1

第二十壱話―雪ノ下祭―其の参―


お華さんが襖を開ける。
すると長次郎さんと草士さんがパッとこちらを見た。

長次郎さんが目を見開き、一瞬何か言おうとして微笑んだ。

「…リョウコさん、よくお似合いで。やっぱり私の目に狂いは無いな。」

そう言うとカッカッカッと音を立てずに笑った。
草士さんはしばらく私を見た後に一瞬悲しそうな顔をした。
でもすぐにいつものように目を三日月のようにして微笑んだ。

「…本当、良く似合ってます。お華さんの着付けは手際が良くて素敵です。お茶
、用意しておきました。」


――――――――



ちゃぶ台を囲んで四人で座る。
みんな着物なので本当にタイムスリップしたような感覚になる。

長次郎さんは、退院したのではなく、お祭りに出る為に外出許可を貰って
一時帰宅したのだという。

なんでも雪ノ下祭は毎年欠かさず出ているから、死んでも出たいのだそうだ。
ちいさなお御輿も出るらしく、長次郎さんも少しだけかつぐらしい。
そんなに元気なおじいさんの身体の何処が悪いのか検討もつかない。
しかし昔から呼吸器官系の持病があり、季節の変わり目などは体調を崩しやすいという。
今日はお祭りの事もあって、気持ちがあがっているのか、いつになく体調が良いとのこと。

しばらくすると、長次郎さんが立ち上がり、何やら出かける準備をしている。

「私は先に行って町内会長さん達に挨拶してくるよ。草士たちは後でゆっくり来
なさい。」

するとお華さんも立ち上がり、荷物をまとめ始めた。

「じゃあ私も長次郎さんと一緒にに行こうかしらね。うちのお店からおにぎりと
お惣菜を出してるの。後で遊びにいらっしゃいね。」

そう言って長次郎さんの後についていく。

お華さんはすこしぽっちゃりとしているが、背筋はピンと常に伸びていて姿勢が
良い。おそらく草士さんのお母さんと幼なじみということは現在50歳ぐらいだと
は思うが、女将の貫禄の中にも品がある美人だ。
着物のすごいところは普通に動いていても背筋が伸びるところだと思う。
きっとお華さんはいつも着物を来ているからあんなに立ち振舞いが綺麗なのかな
、と思う。


「雨…止んだみたいすね。」

草士さんは窓の方を見てつぶやいた。
さっきまで土砂降りだったのに、
いつの間にかカラッとした晴天になっている。


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