月の影-2
ついさっきまで感じていた肌寒さは嘘の様に消え…全身がポカポカと暖かかった。
何かに魅入られた様にまどろむ僕のパジャマのズボンをミルはゆっくりと下ろしていった。
そしてパンツも。
繰り返す様だが恐怖や慄き、抵抗感まで一切なかった。
ただ…僅かな恥ずかしさとそれを遥かに上回る悦楽に僕の心身は支配されていた。
僕のモノはこの他派から見たら不条理極まりない状況を楽しみいきり立っていた。
ミルは僕の股の間にその小さな身体をもぐり込ませると…丸い目で僕の顔の方を見上げながら僕のモノを舐め始めた。
「あぅ…ミ…ミル…」
チロチロと舐め上げる舌は乳首の時と同じで今までの何よりも遥かに気持ち良かった。
ひとしきり舐めるとミルは僕の腰に跨ってきた。
ミルが何をするつもりなのかも判ってたし…僕もそれを望んでいた。
白い肌に薄い陽炎の様な陰毛が見えた。
そしてその陰毛の奥に隠れた秘裂にミルは僕のモノを押し付けた。
「入れてごらん…ミル…」
僕の言葉にミルは小さく笑うとその細い腰を沈めていった。
ミルは暖かく、強く僕を包み込んだ。
身体を壊していた事もあり数年ぶりの性交だったが…そのめくるめく快感に下半身がとろけそうだった。
ミルも気持ちがいいのであろう声こそ出さないが…その愛くるしい顔を喜びに歪め、僕の上でゆっくりと動きだした。
普段は息苦しい呼吸もこの時はスムーズだった。
「ミル…ミル…」
波の様に繰り返す快感に僕はミルの名を呼んだ。
ミルの呼吸も荒くなっている。
「ミル…」
昨日まで体調では考えなれない事だが僕は身体の上下を入れ替えると仰向けに寝かせたミルを何度も何度も貫いていた。
ミルも両手で僕の首にしがみつきながら下から夢中で腰を振ってきた。
「ミ…ミル!」
僕はミルの中で果てた。
数年ぶりの爽快感を感じながら僕の意識は闇の中に堕ちていった。
次の日…ミルは姿を消した。
最初は心配していた家族も一週間経つと諦め…二週間経つと忘れ始めた。
ミル…確かに猫の時から変わっていた。
魚や肉よりもキノコを好み…猫のクセに水浴びを好んだ。
あげく女の子に化けて僕と関係を結び…フラッと消えた。
ホントに不思議な猫だった。
不思議ついでに…回復の見込みはなかったはずの僕の身体が治りだした。
あの夜を境に…。
奇跡だと医者は言った。
それから…。
およそ五十年が経った。
月の輝く夜だった。
ふと気配を感じた僕が目を覚ますとあの日と同じミルがいた。
少女の姿で部屋の端に立っていた。
「ミ…ミル…」
僕は懐かしさに目を細めた。
“今日は新しい役目で来たの”
初めて聞くミルの声は鈴の様に軽やかで心地が良かった。
「どんな役目なの?」
“あなたを送り届ける役目”
「そっか…」
“ごめんね…”
「謝る事なんかないよ…」
“幸せだった?”
「ああ…幸せだったよ」
僕の言葉にミルは小さく微笑んだ。
「じゃあ…行こうか…」
あの日に戻った僕はミルと手を繋ぎ歩き初めた…月の光の中を。
完