過ぎ行く時の中、残されるモノ-4
〜〜**〜〜
「……あ、僕……」
目が覚めた僕は辺りを見回す。
周囲には僕のゲロと鉄の臭いが充満していた。
「目が覚めた?」
「うん」
その子は建物にもたれるようにして、通りのほうを見ていた。
警戒してるんだと思う。さっきのアイツらのことを。
「ありがと……」
「んーん、いいよ」
「そうだ、忠志……」
「見ないほうがいいよ」
僕は周囲を探そうとしたけど、思い出して止める。
もう忠志は……。
「友達だったんだ」
「そう……」
低い声。僕と同じくらいなのに、なんでそんなに冷静なんだろう。
「それより、立てるか?」
「ん? ああ、うん。もう大丈夫」
「そうか。なら、行こう。ここから出る方法を教えてあげるから」
その子は僕に手を差し出してくれた。
それを握り返し、ようやく立ち上がる。
まだ右半身は痛いけど、でも大丈夫。
一人じゃないってだけで、かなり気持ちが楽になったし。
「うん。ありがとう」
「なに、お互いさまだよ」
「僕は……えっと……、和……義。君は?」
なんだろ? なんかおかしい……。
「僕は……たしか……」
「たしか?」
「違う、隆だよ」
「なんだ隆の聞き間違いか。よろしく隆」
「こっちこそ、和義」
軽くお辞儀したあと、隆は通りを進んでいった。
なんか変だけど、僕はそんなことよりも早く家に帰ろうと、隆を追ったんだ。
〜〜**〜〜
――ねぇ、アイツらってなに? なんであんな風になってるのに、動けるの?
――あれ、死んでるよね? なんか、頭がぱかってなってるし
――なんで忠志は死んでたの? 殺されたの? まさかあいつらに?
――帰る方法って本当にあるの? っていうかここどこ?
僕は隆を質問責めにした。
アイツらがいつ出てくるかもっていう怖さはあるけど、隆がいることで、かなり気が楽だし、そういう怖いこととかを紛らわすためにも、とにかくしゃべった。
「いや、僕もよくわからないよ」
「そう……」
「ごめん。何も答えてあげられなくて……」
「いいよ」
よく考えてみれば、隆だって僕と同い年くらい。パニックになってないだけでもすごいんだし怪物の類を知らなくても当然だと思う。
「なんか、バイオハザードみたいだよね。ここ」
「バイオハザード? なんだそれ?」
隆は歩きながら不思議そうに僕を見てきた。
「知らない? 映画にもなってるゲームなんだけど……」
「そうなんだ。ゲームか。ファミコンなの?」
「ファミコン?」
今度は僕が聞き返す番。
ていうか、ファミコンってあれだよね。ゲーム屋さんに「懐かしいゲーム」とかいう感じで置いてあるやつ。
誰かと一緒に行くと、懐かしいとかいいながら眺めてたなあ。……誰か? 違うよ。父さんだよ……。
「違うよ。プレステ3だよ」
「プレステ? ふうん、そんな新しいゲームがあるんだ」
「ゲームじゃないよ。ゲーム機だよ。隆、あんまりゲームやらないほう? ポケモンとかも?」
「ポケモン……なら知ってるよ。よく友達とゲームボーイ持ち寄って交換したり、対戦してたし」
「ゲームボーイ?」
「ポケモンはゲームボーイだろ?」
「アドヴァンス?」
「アドヴァンス?」
「いや、いいけど……」
隆ってあんまりゲームとか好きじゃないんだな。んでも、ポケモンの対戦、ゲームボーイなんかでできるのかな?