投稿小説が全て無料で読める書けるPiPi's World

過ぎ行く時の中、残されるモノ
【ホラー その他小説】

過ぎ行く時の中、残されるモノの最初へ 過ぎ行く時の中、残されるモノ 2 過ぎ行く時の中、残されるモノ 4 過ぎ行く時の中、残されるモノの最後へ

過ぎ行く時の中、残されるモノ-3

〜〜**〜〜

 どれぐらい走ったかわからない。
 息がぜぇはぁいうし、すごく苦しい。
 右足もどんどん痛くなるし、もう走れない。
 後ろから誰かが追っかけてくる気配もないし、僕は突き当たりを曲がったところで、しゃがみこんだ。
 もうこのまま倒れてしまいたいけど、でも、もしアイツらが来たらと思うと、このまま休むのも危ないかもしれない。
 五分だけ。
 時計はないけど、でも、しばらく休む。
 じゃないと、走れない。
 さっきの子、大丈夫かな。
 僕が逃げ出したことわからないと思うし、それに、もしアイツに遭ったらどうなるんだろ。
 心配だなあ。
 でも、帰る道知っているなら……。
 っていうか、帰る?
 というか、ここどこ?
 本当に日本?
 これまで生きてきたけど、僕、あんな恰好の子、見たこと無いよ。
 だって、あんな状態で生きていられるはずないもの。
 脳裏に浮かぶさっきの子の姿。
 明らかに生きていられるはずがないのに、それでも僕を見つめて、手を伸ばし、声をかけ、追いかけてきた。
 もしかして、何かの実験場とか?
 映画やゲームの世界だと、ウイルスの影響でゾンビになって、ぼろぼろになっても生きていられるとか……。
 確か、バイオハザードとか言う映画だったけど、その世界に迷い込んだとか?
 そんなの……、だって、僕には武器も何もないのに、どうやって戦えばいいの?
 もう嫌だよ。
 こんなところ……。
 …………。
 なんかお尻が冷たい。
 濡れてるのかな?
 辺りを手で探ってみると、やっぱり濡れていた。
 それが僕のおしっこじゃないのはわかるけど、いったい何?
 ……ん?
 ……誰か居る?
 暗がりの中、弱い明かりの下に誰かのシルエットがある。
 僕は瞬間、身構える。
 アイツらなら困るけど、でも、その誰かは座ったまま動かない。
「だれ?」
 僕の問いかけにも無反応。
 何か武器になるものはないかとランドセルの中を探す。
 見つかったのは三十センチの定規。僕はそれを剣のように構えると、じりじりと近づいた。
 ぴちゃぴちゃと音がする。さっきの水はそいつのほうから流れているみたい。でも、そいつは座ったまま動く気配が無い。
「誰なんだ……君は……」
 僕が前に立っても座ったままのそいつに声をかける。
 やっぱり返事は無い。
 定規で頭をつついてみたけど、反応は無くて、それどころか、そのまま倒れた。
「え?」
 そいつはそのまま倒れたんだけど、何かが撒き散らされるようなちゃぱって音がした。
 なんだろ?
 気になって蛍のライトを取り出して明かりをつける。
「ひっ!?」
 その子、横になってるんだけど、でも、ただ横になるっていうじゃない。
 頭が陥没してて、そこからいろいろ飛び出して、だから、なんていうのか、さっき見たアイツと同じなんだ。違うのは、動き出さないところぐらい!
「ぎゃぁ!!!!」
 腰が抜けた僕はそのまま倒れこんでしまい、しばらくそれから目を離すことができなかった。
 でも……、しばらくして僕はあることに気付く。
 それに見覚えがあるんだ。
 近くにはランドセルがあって、ボールがころころ転がってる。
「忠志……?」
 間違いない。忠志だ。
 だけど、返事はない。
 多分、死んでる。
「うっ……うげぇえええぇぇ……」
 途端、こみ上げるものが口の中を酸っぱくさせる。
 抗うことなくそこらへんにぶちまける。
 さっきまで水だと思っていたのは忠志から流れてきた血なんだ。
 それに僕の吐いたものが混じり、周囲を汚す……。
「ここに居たのか……」
 誰かが僕の背中をさする。
 詰まったものを吐き出すと、だいぶ楽になる。
 声は聞き覚えがある。
 さっきの子だ……。
 僕は安心すると、そのまま横になって目を閉じた。


過ぎ行く時の中、残されるモノの最初へ 過ぎ行く時の中、残されるモノ 2 過ぎ行く時の中、残されるモノ 4 過ぎ行く時の中、残されるモノの最後へ

名前変換フォーム

変換前の名前変換後の名前