JoiN〜EP.5〜-6
「日比野さんてやっぱ変。自分勝手だし、言ってることちぐはぐだし。白い歯がむかつくし」
栞菜にも言われた。ひ、人の言動は毎日変わるもんだ、それが普通じゃないのか?
「俺にとっては誉め言葉だな。でも今は嬉しくない。何年かぶりのメンタルブルーだ」
「・・・嬉しくないの」
「うん、栞菜が立花さんに甘えてばかりだから。相手が女じゃ強く言えないだろ」
ふふっ、といきなり目の前の栞菜が吹き出した。
ちょっとした冗談でも笑うので、それが見たくてよく笑わせてるが、今は何もおかしな事は言ってないぞ。
なんだよ!何がおかしい。俺にとっては越えられない壁なんだぞ、それを笑うなんて。
分かんないだろうな。この気持ち。
女同士で男には踏み込めない領域、それがどれだけ悔しいか分かるか?
「これでも悔しいか?日比野」
「お前っ、呼び捨・・・!」
栞菜は俺のすぐ隣にお尻を下ろした。
・・・な、なんのつもりだ、おねだりでもするつもりか。
「ちょっと目を閉じて。すぐ終わるから」
そして赤いハンカチを取り出して汗を拭いてくれた。
栞菜のイメージカラーだな。これほど赤が似合うのはお前か、あるいはハイビスカスくらいだぜ。
そうだ、頭にハイビスカスをつけたら似合うだろうなぁ・・・
ま、待てよ、こんな事したってな、何も出ないからな?
「こんなとこに居たから汗だくなんだよ。見てこれ、ちゃんと洗って返してね」
濡れて色が濃くなったハンカチを広げて、うふふふと笑う栞菜。
い・・・今まで自分から近づいてこなかったくせに、なんで今日は距離が近いんだ。
やめろ、やめてくれ栞菜!近くにいたら俺の匂いが、お願いだ今すぐ離れ給え!
「緊張してる?」
「してるといえばしてる、してないといえばしてない」
「女の子の扱いには慣れてるんでしょ?あ、また汗かいてる」
ん・・・慣れてるよ、嘘じゃないよ。いや本当に。
ただまあ、その、こうして女の方から擦り寄ってきたっつうのは、経験が無くてな。
自分のペースに引き込めないと俺は防戦一方になってしまう。
「私の方が緊張してるよ」
「ドラマはもう終わっただろ、緊張する理由はないはずだ」
「ドラマより、心臓がパンクしちゃいそうなの・・・」
栞菜は口をすぼめて深く息を吸い込んだ。そして、その大きな瞳を俺に向けた。
まるで猫みたいなくりくりした可愛らしい瞳じゃないか・・・