〈蠢く瞳〉-3
『井川……アンタさ、ラケットも握らないうちに辞めるワケ?チャラいのは顔だけにしてよね』
「!!!!」
夏帆の玉拾いの態度に苛ついた先輩が、傍に近付き気合いを掛けた。
それは三年生の棚瀬有海(あみ)だった。
有海も、夏帆に負けぬ程の美少女であったが、ややつり目で八重歯の見える顔は気の強い印象を与え、柔らかな雰囲気の夏帆とは対照的であった。
有海「一生懸命頑張っても、それでも選手になれないまま卒業する人だっているのに……少しくらい根性見せなさい!」
夏帆「……す、すみませんでした……」
有海は背がかなり低く、夏帆の方が身長が高かった。夏帆は身長162p、有海は最近150pを超えたくらいだ。
傍から見たら、どちらが先輩なのかは分からないだろう。
自分よりも背の低い先輩に叱られ、俯いたままポロポロと涙を零した……叱られた悔しさではなく、厳しい中にも愛情を感じたからだった。
おそらく有海も、最初は今の自分のように、妬みから辛く当たられた事だろう……それでも練習に励み、今では主力選手として皆を引っ張っている……夏帆は、有海に対する尊敬と、憧れを心に抱き始めていた。
『や、これはどうも……』
『練習始まってますね』
中学校を囲む雑木林。テニスコートの周りにも鬱蒼と繁り、いつの頃からか、その中に数名の人影が見えるようになっていた。
男達の視線の先に、ジャージ姿で髪を後ろに束ね、必死に先輩とラリーを続ける夏帆の姿があった。
『今日の夏帆ちゃんも可愛いですね』
『あ〜、惜しい!もう少しでボールに届いたのに』
お目当ては、やはり夏帆だった……中学校に現れた“アイドル”を肉眼で見ようと、あの少女趣味の男達が集まっていたのだ。
『あの髪の長い娘、アレも可愛いくなりましたね』
『あ〜、なんか猫みたいな顔の娘ね。あの時《選考》で落として正解でしたな』
『ムフフ……美しく成長しましたなあ…あの小猫ちゃんは、別口で楽しみたいですな』
『あとの奴らはゴミだよな』
勝手な事を話し、二人を視姦する男達。
気持ちの高ぶりとともにズボンのファスナーを下ろし、膨れた肉棒を握り絞めた。
有海「そ〜れ!!」
夏帆「あん!!」
厳しい練習に思わず発する声、少女の力んだ叫び声は、男達の股間をピリピリと刺激した。
『か…夏帆ちゃん…』
『はふ…んん!!』
自分達の姿を見て、自慰行為に及んでいるギャラリー達の存在に気付かず、夏帆と有海は黄色い声を発しながら、互いに全力でボールに食らい付いていた。
その〈光景〉は、陽が沈むまで続いた……。