『太陽の昇る方へ 続・愛なんて何処にも…』-1
唇の同士の接触…あの人との時にように、心が震えることはない。
「好きだよ…」
耳元で囁かれる言葉。胸をまさぐる手のひら。
すべては、口実なんでしょう?
刹那の快楽を得る為の……
体が熱くなって、奥から泉が溢れ出るのを感じても、心はしんと堅く凍っていて――
ヒサ……
私はそっと乾いた涙を流した。
あれは寒風吹き荒ぶ中、歩道橋で一人、行き交う車の群れをぼんやりと眺めていた時――
「君!はやまるな!」
そう言われて、腕を捕られた。
「…はい?」
きょとんと見上げたら、その人は顔を赤くしていた。
「私、そんな死にたそうな顔してました?」
「い、いや…その……申し訳ない…勘違いしました」
そう謝ってきたその人は、リクと名乗った。
あれは本気だったのか、新手のナンパだったのか
その日のうちに私たちは体を繋いだ――
『好き』
『可愛い』
『愛してる』
どんなに言葉を積み重ねられても、心に響かない。
リクは悪い人ではないみたいだけど
結局、ヤリたかっただけなんでしょう?
「あ…んっもっとぉ!」
「はぁはぁ…すごっナルミちゃんの中…気持ちぃ…」
ただ、私は忘れたいだけ。
一瞬だけでもいいから、私を真っ白にして?
それから私たちは時々逢って
これを付き合っているというのか、いわないのか…
「ん…っ」
いつものように唇を合わせる。
侵入してくる舌を吸って
上顎を舌でなぞって
「ふぁ…んあっん…」
漏れる吐息。
シャツのボタンを外され、ブラ越しに乳首を転がされる。
「んんっ…」
お返しとばかりに太腿で股間をさする。
「はぁ…」
ズボンを下ろして、くわえようとすると
「いいよ、そんなことしなくて」
そのままベットに倒されて、露にされる肢体。
「…綺麗だよ」
チュッチュッ、と体中にキスを落とされる。
「はぁ…あん」
反応する体。
置き去りにされる……
心――
ホントに?
気付きたくないだけなんじゃないの?
――何に?
ちゅくちゅく
私の内側を指でかき回されて、腰を浮かして貪る。
そして――
「…ぁあ…」
体を貫かれる。
リクの背中にしがみついたら、ぎゅっと抱き返された。
一気に激しくなる動き。
そして私の内部で膨張し、放ったあと収縮する。
行為のあと、抱き締められたまま、囁かれた。
「ナルミちゃん、俺のこと…見てよ」
「え?」
「…誰を想っていてもいいから……俺のことも見て?」
「……っ!」
さあーっと熱が冷えた。
見透かされていた
「俺、ホント一目惚れだったんだよ?ナルミちゃんのこと」
「…嘘」
信じない…
信じられない……
「初めて見た時の、哀しそうな瞳を俺が変えてやりたいって思ったんだ…でも、無理だったのかな?」
そう言ったリクの目がとても哀しそうだった。
自分が傷付きたくなくて…
殻に閉じこもって…
私この人のこと、とても傷付けていたのかも知れない。
「ごめんなさい…」
「…謝って欲しい訳じゃないよ」
「でも…」
「もういいよ。これからも傍にいてくれる?」
「…うん」
まだ、分からない。
でも、この人の傍は暖かいから――
もう少し、傍にいてみようと思う。
夜の闇に閉ざされていた心。
これからは開いて――
今、本当に言える――
さようなら
――ヒサ
[完]