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『愛なんて何処にも…』
【その他 官能小説】

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『愛なんて何処にも…』-1

「ねえ、キスしていい?」
メル友のヒサがそう言った。
狭いカラオケボックスの中、二人っきり。
掬いあげるような黒い瞳とぶつかった瞬間、『欲しい』と思って、返事をするかわりに自分から唇を押しつけた。

「んっ…ぅふぁ…ナルミさんっ積極的……」
舌を絡めて、どちらのものとも知れない唾液を啜って
ソファにヒサの体を沈める。

首筋に顔を寄せて見付けた紅の印に、心が冷えた。
そう、だった。ヒサは彼女持ちなんだ……


それでも、止まらない衝動。
首筋にキスを落としながら、手は服の中に潜り込む。
「あっ!はあ…」
乳首に爪を立てると、ヒサの身体が跳ねる。
上着を捲り上げて、ちろちろと這わせる舌。
指は、そろりと背筋を滑っていく。
密閉空間の中、響くのはヒサの荒い息遣いとぴちゃぴちゃという水音…

「あっ…ゃんはああ…」
ズボンのジッパーを下ろして、強張ったモノを握りこむ。
揺する度にどんどん固さを増していくモノに、私の身体の奥がカーッと熱くなる。
ショーツを脱ぐ手間ももどかしく、上にのしかかり狂ったように腰を振った。
「あっん…はあはあ…」
「あっいっイク…」
快楽だけを貪り合って、奥に熱いものを感じると同時に達した。

それが、この関係の始まりだった。


「今日はココでしようか?」
マンションの屋上に続く踊り場で、にっこりと笑って言うヒサ。
「え…っ」
拒んでも、触れられれば否応なしに快楽に引きずり込まれるのは分かっている。
ヒサは年下なのに、私は勝てない。
唇を合わせれば、ヒサの手がスカートの中に伸びて、するりと紐パンが奪われ、乱暴に蜜壺を掻き回される。
それでも、刺激を待っているソコはやがてくちゅくちゅと隠微な音を立て、ヒクヒクとヒサのモノを焦がれる。
「ナルミさん、自分ばっか気持ち良くなんないで?」
目を逸らせない妙に幼い笑顔と、逆らえない甘えた声。
跪いて取出し、先端だけくわえて、ちゅぽちゅぽ吸い上げるとたらたらと先走りが零れる。
「あっ気持ちぃ」
くわえ込んだまま、棹に手を添え扱くと
「うっ…飲んで?」
言い終わるか終わらないかのうちに、白濁液が口に注ぎ込まれる。

ゴクン…ゴクゴクっと喉を震わせて飲み干すとイッたばかりのモノを奥までくわえて上下に動かした。
口の中で、また元気を取り戻していくモノ。
「もういいよ?」
やっと離して、壁に手を付きお尻を突き出す。
「ナルミさんエロいよ…」
耳元で囁かれて、全身に火が点く。
「あぁっ!」
一気に後ろから貫かれて、思わずあげた叫び。
「あんま声出すと人来るよ?」
その言葉に、ぐっと唇を咬む。
「うっ…んん…」
責め立てるように激しさを増す動きに声を殺しながら、すっと涙が一筋流れた。


愛なんてあるはずがない。
ヒサとは身体だけの関係。
束縛出来ない、束縛してもくれない。
『誰とヤッてもいいよ』って、『俺だって彼女もセフレも一人じゃないし』って。

解っていたのに、私バカだ――


何、本気になってんの?
気付きたくなかったよ…

愛されていなくても。
それでも、ヒサからの連絡を心待ちにする自分。
どこまでも…堕ちていく…。


でも、見てしまったの。
彼女と歩いているヒサを。
私には決して見せない、優しい笑顔で。
彼女の顔も幸せに輝いて――

出ていって全部ぶちまける?

そんなことしたら自分が傷付くだけだよ?


「ヒサッ!ヒサァ…ヒッ」
逃げるように部屋に帰って、枕を握りしめて泣き叫び続けた。


翌日――
『本気で好きな人出来たから、もう会わない』
『ふーん、頑張ってね。さよなら』
『さよなら、今までありがとう』
それだけメールで会話して、途切れた関係。
引き止めてもくれなかった…
解っていたはずなのに、どこかで期待していた。
これ以上側にいたら、ヒサから離れられなくなるから。
嘘吐いてでも、別れを選ばなくてはなりませんでした。

さよなら、ヒサ
愛していました…


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