最後の夜・後編-4
「ハア・・・はあ。こんなとこにしか連れて来れなくてゴメンな」
ロイが連れてきたところは城の外の森の中。
昼間のうちに衛兵の死角になる城壁にロープを伝わせ抜け出せるようにしていた。
森はシンと静まり、芝生のように短い草が生い茂っていた。
木々の間から月明かりが差し込み、幻想的な空間だ。
「ううん、とても綺麗…こんなとこ初めて…」
ガーネットは目を輝かせながら森を見渡した。
ロイはそんな少女のようなガーネットを微笑ましそうに見つめ、手ごろな高さの切り株に座って自らの足をパンパン叩く。
「おいで、ガーネット」
「…え…っ」
どう考えてもロイの足の上に座れという事よね…?
ロイの目の前まで歩み寄り、緊張しながら背を向けて座ろうとすると「違う」と言われた。
「なに…?」
「こっち向いて座って」
「向き合って??」
こくっとロイが頷いた。
向き合うということはロイを跨いで座るということだ。
たまらなく恥ずかしいと思ったが、愛しいロイに近づきたい欲望が勝った。
ガーネットはロイに向き直り、ロイの首に手を回しながら足を開いて足の上に跨った。
バランスを崩さないようにロイがガーネットの腰に手を回す。
ち、近い…
ガーネットはすぐ目の前にロイの顔があり、至近距離で見つめられて頬を赤く染めた。
「ガーネット、少し痩せた?」
「あ…ちょっと食欲なかったから、かな?」
ただでさえ小さな顔なのに、顎のラインがさらにシャープになっている。
自分のせいだと思い、ロイは胸が痛んだ。
関係ないだなんて一時でも思った自分を恥じた。
ロイは腕に力を入れてガーネットの身体を抱きしめた。
「あっ…」
大きな身体にすっぽりと包まれてガーネットは胸が高鳴った。
草花の匂いが染み付いたロイの肩に顔を預けて小さく息を吸う。胸にロイの匂いが広がり、愛しさに涙がでそうになる。
ぎゅっとロイに回した腕に力を込めた。