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最後の夜
【女性向け 官能小説】

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最後の夜・後編-3

ロイはガーネットの姿を見ると小石を捨て、まっすぐにガーネットを見つめた。

たかだか1週間会わなかっただけなのに、何年振りかに再会したような気分だ。
胸の奥に熱が生まれ、焼け焦げそうな想いに息苦しくなる。
自分はこんなにもガーネットに逢いたかったのだと思い知った。

少し複雑そうな表情で固まっているガーネットに「おいで」と手招きした。
ガーネットはしばらく目を見開いて驚いていたようだが、意を決したように頷いた。


ガーネットは窓枠に手をかけた。
こんなアクロバットの真似事するの初めてだ。
窓を跨ぐことも梯子を降りることも生まれてはじめての経験。

ぐっと手に力を込める。

「――姫様?何してるんですか?」

ビクッと身体が引きつった。
夢中になっていて足音に気づかなかった。

「ア……アン…」

ゆっくり振り向くと、アンが訝しげな表情でこちらを見ていた。
今にも窓から逃亡しそうなところを見られてしまい、言い逃れできない状況だ。

「姫様…もしかして外に…」

「アン!!お願い。見逃して!明日から跡継ぎとして責任を果たすわ。だから今夜だけは許して!!」

アンは窓に近づき下にロイがいる事を確認した。、ロイは少し顔を歪めて笑いかけてきた。
ガーネットはロイの事を見られ、ばつが悪そうに唇を噛んでいる。


――こんなとこに梯子を架けて会っていたってことね… ロイのヤツ、よくやるわ…


「アン、お願い!!何も言わずに行かせて?」

ガーネットは切羽詰ったようにアンに詰め寄った。

必死の表情――
不摂生のために顔色が悪かったのかと思っていたけど、いまガーネットの頬には赤みが戻り、唇も血色が良くなった。

姫様は体調を崩すほどにロイを求めていた…ってことね…

「――姫様、私は何も見ていません。明日の朝に起こしに参りますのでそれまでゆっくりお休み下さい」

「…アン…?」

アンはニッコリと微笑んだ。ガーネットの背中を後押しするように。

「…アン!!ごめんなさい!ありがとう!!」

ガーネットはアンに抱きついて礼を言った。

「必ず戻るから!」

「はい、分かってますよ」


アンに何度も礼を言うと、風に髪をなびかせながらガーネットは地上に降りて行った。
ロイが降り立ったガーネットの手を握り、そのまま二人で駆けて行く。
アンはそんな二人の様子を泣き笑いな顔で見つめていた。

最初で最後の二人の夜の始まりを…





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