最後の夜・前編-12
「逢いたいのに逢うたびに苦しくて、でも逢わずにはいられなかった……俺はお前が惜しくなるんだ。誰にもやりたくなくなる。泣いた顔を見るとめちゃくちゃに抱きしめたくなる…」
「ロイ……」
涙腺が決壊したように止めどなく涙があふれてくる。
「もうそれを隠すのも苦しいんだ…」
ロイはガーネットに背を向け窓枠に手をかけた。
「ごめんなさ…っ…私…!」
「ガーネットが悪いんじゃない。誰も悪くないんだ。だから辛いんだ…」
俺が庭師の息子なのもガーネットがこの国を背負う者なのも、選びようが無かった。
誰のせいでもない、事実。
ロイはもうこちらを振り返らず「さよなら」とつぶやき梯子を降りていった。
「ロ…イ…っ」
いかないで
たったひとことが言えない――
自分ばかり辛いと思っていたかもしれない。
ロイの苦しみにも気づかず、一人で嘆いていた。
3ヶ月もあったのに、私はロイを気遣うこともせず自分の思い出作りに付き合わせた。
こんな愚かな私が引き止めるなんて出来ない…
ロイが梯子を折り畳む音を聞きながら取り返せない日々を嘆き、床に崩れ落ちた。