過ぎ行く日々、色褪せない想い-6
彼は起き上がると、伸びをする。
電気をつけたあと、立ちくらみと蛍光灯の光で目が痛い。
そして、
――ん!?
窓の外に見えたもの。
いつもの癖でブラインドを下ろし、明かりも消す。
窓の隅っこで、おそるおそる道路を見る。
ブラウス姿の美琴と、例の男。
肩を抱く手はモールで見たときと一緒。そして、彼女が寄り添っているようにも見える。
唾を飲もうとすると、渇いた喉が痛くなる。
見開いた目はやはり瞬きを忘れていた。
玄関を入り、数秒して向かいの窓の電気が点く。
いつものように机に向かう彼女と男。
けれど、何かに気付いた男は、窓に歩み寄り、薄桃色のカーテンを閉めた。
――なっ!
明らかな挑発行為に、体温が瞬間的に二度上昇する。
しかし、今の彼にできるのは、カーテンを見つめるだけ。
手近にあった鉛筆を握る。痛みとミシミシという音が聞こえた。
薄い桃色のカーテンがふっと暗くなる。
淡い白熱灯の明かりが漏れるだけになった。
ペキョ。
折った。
**――**
何もする気になれない。
悠は、ただ机の前に座り、頭を抱えていた。
時計は既に十時を回っている。
部屋から漏れる明かりが蛍光灯に変わっていた。彼の部屋は暗いままだ。
男は帰ったのだろう。けれど、間違いなく彼女とあの部屋に居た。
その現実と、薄桃色のカーテンのから漏れる光の弱さが、彼を狂わせた。
ぶー、ぶー、ぶー……。
背後で彼の虚をつくかのように音がした。
低い振動音はメールの着信音。
悠は鞄から携帯を取り出すと、スライド式のそれを起動する。
――誰から……、美琴?
メールは美琴からのもの。よく考えれば彼女くらいしかメールアドレスを知らないはずで、家族なら階下か隣の部屋にいるだろう。
――なんだろう。
焦る気持ちを抑え、ゆっくりとメールを開く。
件名:ありがとねo(^v^)o
悠からプレゼントもらえて嬉しいわぁ〜(ハート)
最近冷たいから、もううちのこと嫌いになったんかとおもったわ(T^T)
これからは大事にしいよ?女友達なんて、後で後悔したっておそいんよ?
…………
内容は簡単にプレゼント嬉しかったというものだった。
顔文字と数行言葉に、悠は安堵と安らぎを感じていた。
件名:Reありがとねo(^v^)o
最近は試合も無いし、まったりと部活してるよ。そっちこそ勉強は忙しい?
俺は…………
打ち終えて待つこと二分、その間もメール問い合わせを三十秒ごとに行う。
そして着信振動。
メールには勉強のことや近況が書かれていた。
美琴は何も変わっていない、自分の知る幼馴染。
全ては取り越し苦労であると感じた彼は、今から夕食を食べると返したあと、部屋を出た……。