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過ぎ行く日々、色褪せない想い
【学園物 官能小説】

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過ぎ行く日々、色褪せない想い-4

**――**

 いつもより早い帰宅時間に、悠は寄り道をしていた。
 相模原駅内のショッピングモールを久しぶりに歩くと、その様変わりに驚いてしまう。
 少し前に美琴と歩いたときは、コンビニエンスストアを大きくしたようなキオスクとクリーニング店がある程度だったのに、今では雑貨屋や本屋、ブティックまで入り込んでおり、近くのデパートとも連絡通路で繋がっていた。
 ファンシーな雑貨屋は店内からはみ出すほどに商品を飾っており、行き交う人とすれ違いざま、カゴに詰まれていたぬいぐるみを落してしまう。
 白くてふわふわした毛並みの犬のぬいぐるみ。
 丸いボタンの目と独特のもふもふした手触りに、しばし楽しんでしまう彼が居た。
 値札を見ると、千五百円の六割引。品薄現品限りのそれに妙に心が動くのがおかしかったが、袖振り合うも他生の縁と、無生物であるそれをレジに持っていく。
 贈答用と聞かれたので頷くと、サービスでラッピングしてくれて、ついでにリボンもつけてくれた。
 レジを後にして、手元にあるそれをどうすべくかしばし悩む。
 手触りも見た目も悪くないけれど、男子高校生の部屋にぬいぐるみを置くことに抵抗がある。志保にでもわたそうかと思ったが、誕生日はまだ先だし、いきなりわたされても気持ち悪がられるのがオチだ。
「……これなんかどうかな……」
「……え? 似合います?」
 逡巡している彼の耳に、聞きなれた声が届いた。
 雑踏の中に居てどうして聞き取れたのか?
 空耳と願いつつも、視界には見慣れた彼女の姿を見つける。
 ひらひらしたフリルの目立つキャミソールを身体に当てて、あの男に笑いかけている。
 その光景は、竹刀の一撃など問題にならないほどの衝撃があった。
 がくっと膝から力が抜け、頭が重くなる。そのまま倒れてしまえばどんなに楽だろう。けれど、騒ぎを起こして気取られてはいけないと、気力で奮い立つ。
「先生はこういう女の子らしい恰好が好きなん?」
「そういうわけじゃないけど、美琴ちゃんに似合うと思うよ……」
「めっちゃうれしぃですわぁ〜、うち、そんなことゆうてくれる男おらんし〜」
 細目が嬉しそうなカーブを描くのが見える。少し前に彼にのみ見せていたであろう笑顔が、今は別の男に向けられている。
 これ以上見てはいけない。ブラインドもないのだから、気付かれるのは時間の問題。二人が着せ替え人形のように洋服を楽しんでいるうちに、逃げるべき。
 情けない気持ちを抱えたまま、悠は反対方向へ逃げようとする。しかし、
「あれ? おーい、悠〜、はるかかなたにいるん、悠く〜ん!」
 逃げようとしたところで、気付かれてしまい、彼女のよく通る声が彼を捕まえる。
 しばし固まる。
 その間も自分を呼ぶ声がどんどん近づいてきて……。
「どうしたん? 今日は部活ちがうん?」
 人差し指でぐりぐりとわき腹を突きつつ、前のめりなって彼を上目遣いに睨んでくる美琴に、やはり気持ちが昂ぶる。
「おまえこそ、なんで居るんだよ……」
「ウチは先生と一緒に参考書選んでたんよ。推薦とか無理そうやし、今からがんばらんとね」
 ぐっとこぶしを握り、えへんと胸を張る。少し前までは目立たなかったそれも、最近はブラ無しではしまりが悪いらしく、夏服の上から青いそれが見えた。
 思わず唾を飲む。彼女の女としての成長は認める。そして、あの男は週三回程度、間近で見ているという事実に思い当たる。
「どしたん? 難しい顔して……」
 彼女は彼のよこしまな視線に気付かずに、不思議そうに首を傾げる。ふるっと揺れるポニーテールは、おそらく赤の髪留めで止めているはず。


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