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過ぎ行く日々、色褪せない想い
【学園物 官能小説】

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過ぎ行く日々、色褪せない想い-29

 ――あれ?
 ふと気付く。今日は家庭教師が休みの日だと。
 ――急いで損した。
 悠は走るのを止めてゆっくり歩きだす。
 ついでに自転車を探そうかと、よく放置自転車のある路地裏へと入っていった……。

 駅近くのきらびやかなネオン街。
 ラブホテルのひしめく界隈は、寄り添うカップルがこそこそと歩いている。
 悠にしてみれば場違いこの上ないのだが、意外なことに彼の自転車はこの一角に乗り捨てられていた。
 高校の駐輪場にとめてある自転車を盗み、ラブホテル近くに乗り捨てるという奇妙な犯行。駅近くにあるのなら、誰かがちょいのりに使った程度なのに、この状況には何か作為的なものが感じられる。
 もっとも、今はそれを考えたところで答えも出ないと、早々に立ち去るべく自転車を走らせる。
 そして……。
 ――和子ちゃん?
 ホテルの注射場の出口近くでうなだれる和子がいた。悠は急いで彼女の元へと向かうと、どう声をかけて良いのか悩みつつ、ゆっくりと話しかける。
「和子ちゃん、どうしてここに? 部活は……」
「先輩……、あたし……もうだめかもしれない……」
 悠に気付いた和子は、彼に向かってふらふら歩みより、こてんと頭を胸に埋める。そしてしばらくの沈黙のあと、すすり泣く声を上げる。
「一体どうしたんだ?」
「動画。私の動画が……」
「動画? 和子ちゃんのが、どうかしたの……?」
 例の動画に和子のものがあったとしておかしくは無い。そして、昨今のニュースを見るに、流出という言葉や、回収不能という言葉が脳裏を掠める。
「複製があって、それを、ばら撒くって……」
「なんだって!? でも、まだ、その、ばら撒かれては……」
 言葉遊びというか、時間の問題でしかないが、彼女の言い分からすれば、まだ最悪の事態ではない。問題は、彼らの行動がやはり牧夫にばれているであろうことだ。
「和子ちゃん、落ち着いて。何があったのか、説明してくれ……」
 割と冷静でいられるのは、彼に直接的な被害が無いからなのかもしれない。

 部活へ行く途中、弘樹と会った。彼は疑心暗鬼に捕らわれており、悠とのことを否定しても聞いてくれず、また、彼女としても恋人である彼に過去を話すことができなかった。
 彼とは別れてそのまま道場に向かおうとしたとき、非通知の電話が入った。
 恐る恐るでると、それは牧夫のものだった。
 彼は大事な話があるからと、彼女を駅前のラブホテル街に呼び出した。
 一人で行くことに不安はあったが、これ以上悠とのことを誤解されても困ると、単身で乗り込んだわけだ。
 そして聞かされたこと。
 彼女が先日、サークルに忍び込み、パソコンを弄ったこと。さらに、彼女のデータを削除していたことを知っているという。
 部員から部室に変な二人組みが出入りしていたと知らされた牧夫は、聞いた特徴と出入りする可能性のある人間を照らし合わせていた。
 そして、たまたま電車で乗り合わせていた二人が、その様子に合致すると気付く。
 それとなく観察していて、直ぐに和子だと気付いたそうだ。さらに、悠のことについても。
 いつから撮影に気付いていたかを聞かれたが、すでにアドバンテージは彼にある。
 彼は彼女にこういったららしい。
 ――和子ちゃんのエッチ動画を見て興奮してる奴がいるんだ。もしよかったら相手してくれないかな? かなり金払いのいい奴でさ。多分和子ちゃんもお小遣いもらえるよ?
 猛反発する彼女だが、複製を出まわされることとの交換条件を言い出され、何も言い返せなくなる。
 彼はその提案さえ呑めばデータを削除するというが、信用できるはずがない。商品ラインナップに加わった和子の売春を手放すなど、考えられないのだから。


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