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過ぎ行く日々、色褪せない想い
【学園物 官能小説】

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過ぎ行く日々、色褪せない想い-21

 向かいの家の二階の窓を見る。
 暗がりでカーテンは敷かれていない。
 ――間に合った。
 ほっと一安心する悠は自転車を漕ぐのをゆっくりにする。
 途端に汗が噴出し、シャツがぺたぺたと張り付き始める。
 それは秋風に煽られ、寒気を残して消えていく。
「まだ……だよな……」
 そう思った矢先、通りの向こうに見知った人影があった。
 濃紺のブレザーと膝上五センチのスカート。ポニーテールをふわふわ揺らすのは、細めの女の子。
 ――美琴!
 駆け出したい気持ちが沸き起こる。
 先ほどまでは会って何を話せばよいか、自分のへたれ具合をどう見つめるか悩んでいたのに、こうして彼女を見ると、それもわからなくなる。
「あれぇ? 悠じゃん。どしたん? 今日は早いね〜」
 彼女も彼に気付いたらしく、ぱたぱたと走ってくる。
 それが、単純に嬉しかった。

「ああ、試合も無いし、俺も来年は受験だからさ、早く帰るようにしようかって思って……」
「ふうん、そうなん。よかったわぁ……」
「え? なんで?」
「だって、悠が就職とか似合わんし、それに、ウチだけ大学生で遊ぶ〜なんてできんし……」
「俺だって地元に残るかわからないぞ? ほら、剣道強いところ行きたいし」
「そっか、悠は剣道続けるん」
「ああ、俺にはそれぐらいしかとりえないし」
「そんなんないって……。悠にはええとこたくさんあるよ」
 にこやかに笑う彼女。子供の頃から見てきた二人だからこその、信頼のある言葉。
 何も変わってない。そう感じられる。
「なぁ、最近……」
「そういえば、悠……」
「あ」
「えと」
 お互い言いかけてやめる。
「どうぞ」
「そっちこそ」
 昔なら悠が美琴に譲っていた会話。
 けらけら笑いながら話す美琴に、いつも肝心の話したいことを忘れてしまっていた。
「じゃあ、俺からな。最近、なんかカーテン閉めてるけど、どうして?」
 だが、今は譲れない。譲らないためにも譲れないのだ。
「どうしてって……、それは、その……」
 いいにくそうにうつむく彼女。もし和子の予想通りなら、それは……。
「俺も勉強がんばる。悠も一緒にがんばってるなら、それが励みになる」
 おかしな理屈と思いつつ、そう告げる。
「そう?」
「ああ……。っていうか、誰かが監視してないと、すぐに嫌になるんだよな……。ほら、少し前はさ、美琴がいたから、勉強とかしっかりしないと怒られるって思ってさ」
「そんなん……、それいうなら悠やって、ブラインド閉めてるじゃん……」
「ああ、そういえば……」
「ならウチも閉める〜」
「じゃあ、俺がブラインド開けたら?」
「あけたら……、あけたらどうしよ……」
「別に俺はやましいことしてるわけじゃないし、美琴がいやじゃないなら、ブラインドどころか窓だって開けとく」
「いや、窓は閉めてな?」
「はい」
「ん〜、そっか〜、そうなんなぁ〜」
「いや、別に無理になんていわないよ。美琴が勉強に集中したいからそうしてるんだろうし、変なこと言って悪い」
 作戦は失敗かと思いかけたとき、美琴はうんと頷いて彼の鼻をちょんとつつく。


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