JoiN〜EP.4〜-7
「もっと自分に自信持っていいぞ」
じ・・・じしん?じしんって何、なんのこと。
「自分なら出来る、栞菜にはその気持ちがちょっと足りないな」
「そ、そんな事っ!!」
無い、と言いたかったけど思わず飲み込んでしまった。
・・・言われた通りだ。
あれも出来ない、それも無理、私には出来ない。
口に出してきた回数も多かったけど、その何倍も心の中で呟いてきた言葉。
「自信はな、何かするには必要なんだよ。いってみりゃあ車の鍵みたいなもんさ。無くちゃ動けない」
いつも女の人を見たら鼻の下がびろんと伸びるくせに・・・
話し掛ける後ろ姿が気持ち悪いくせに、たまにはまともな事を言うんだ。
「それには自分をもっと好きにならなきゃな。栞菜、俺に負けないくらい好きになってみるんだ」
「む、無理だよ。だって私っ、目付き悪いし、黙ってると怒ってるみたいって言われるから」
「大丈夫、少なくとも俺はそう思わない。だから、自信を持てよ、な?」
日比野さんがなんでいつも自信有りそうなのか、やっと分かった。
自分のこと好きそうだもん。鏡ばかり見てるし、覗き込んでなんか表情作ってるし。
・・・ここまでならないと自信は湧いてこないのかな。
「お、いけねー戻ってきちまったか。もう少しドライブしたかったな」
車から降りると、眩しさと暑さがべっとり纏わりついてきた。
冷房で冷えた体に夏の日射しはきつくて、頭から焼かれてるみたいだ。
「じゃ、また明日な。暑いから気を付けろよ」
「う・・・うん」
「きちんと覚えとくんだぞ、今日は俺との初デートだからな!いいか、忘れたら思い出させるぞ」
道路から上がる陽炎で、遠くなっていく日比野さんの車がゆらゆらしていた。
いきなりやってきて私を車に閉じ込め、そしてもう帰ってしまった。
まるで今まで体験した事が、あの陽炎みたいに揺らいで見える気がした。
(自信・・・・・・・・・)
嘘つきで適当で、いつも軽い日比野さん。
話す時は笑ってばかりで、喋ることは全部薄っぺらくて信用出来ない。
それでも、何故か
(もっと自分に自信を持っていいぞ)
・・・あの時だけは、ふざけた顔をしてなかった。
(自分を好きにならなきゃな。俺に負けないくらい好きになってみるんだ)
胸が・・・変なの、痛がってるみたい・・・
心臓が、蝉みたいに、うるさく鳴いてるの。
どうしちゃったの、私。まだ朝にはこうなってなかったのに。
私を惑わせたかもしれない人は、もう陽炎の向こうに行って見えなかった。
〜続く〜