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JoiN
【コメディ 恋愛小説】

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JoiN〜EP.4〜-3

「おはよう、栞菜。いやハニー、ダーリンが迎えに来たぞ」


もういるだろうと諦めてはいたけど、まさか本当にいるなんて。
細身の体にぴったり黒のTシャツと、渋い紺色のジーンズが張り付いていた。
シャツの色のせいか、ネックレスがやけに目立って見える。
敬礼をしているけど、整髪料で立たせた髪やいかにも遊びにいく為の服装には不釣り合いだった。

何より無駄に白い歯が見ててイラッとする・・・

「はっはっ、照れなくてもいいだろ?ま、その方が俺は好きだがな」

閉めようとするより早く、ドアを日比野さんが足で止めてしまった。
これじゃ追い返せないよ。何考えてるのこの人。

「もっと自分に素直になれよ。さあ、行こう。迷わず行けよ、行けば分かるさ・・・って栞菜は聞いたこと無いかな?」
「ちょっ、離してよ!行くってどこに?」
「元気があれば何でも出来る!元気があれば、アイドルをデートに連れていける!」

遠慮なしに私の手をぐいぐい引っ張ってくる。
元気がどうのこうのって、そんな擦れた声で言っても説得力無いんだけど・・・
触れた手が熱いのは、炎天下のせいかな。

「お、大声出すよ!!きゃああ助けて、誘拐され・・・んぐ?!ん!んんっ!」
「外は暑いからな、早く車に入りなさい。冷えてるぞ」

私の口を押さえながら、そそくさと車に押し込む。
どうやらエンジンを切らずに停車してたらしい。確かにクーラーが効いていた。
まだ何処に行くのかすら言わないまま、日比野さんはアクセルを踏む。

「全く、外で大声出すなよ。周りの人に誤解されるじゃないか」
「何してんの?具合悪いんじゃないの」
「もう一度言う。元気があれば何でも出来る!」

分かったからいちいち笑わないでよ。
見えるのよ歯が。ああもう、イライラする・・・

「お前は俺を意識している。ビコーズ!マネージャーさんではなく、日比野さんと呼んでいるからだ!」
「別に今日が初めてじゃないけど・・・呼び方なんて幾つかあるじゃん」
「声に力が籠もってるんだよ。自分じゃ分からない、聞く側じゃないとな」

ああ言えばこう言う。
私の問い掛ける言葉をひらひらと躱してしまう、空を舞う花びらみたいな人だ。
いや、花びらじゃ綺麗すぎる。
いくら叩こうとしても躱して、目の前を羽音を響かせ飛び回る、ハエみたいな人に訂正しとこう。

「さあ栞菜、どこに行きたい?お前の望む場所までエスコートしてやろう」
「じゃあうちに帰りたい、すぐ連れてって」
「おっと悪いな、軽く度忘れした。選択肢から自分の家を除外してくれ給え」
「警察行こ。誘拐されたって言うから」
「監獄デートも悪くないな、看守の見守る中愛を育む・・・二人の愛は永遠に逮捕!というのもいいもんだ」
「病院行こう。頭の中身を見てもらえば?」
「検診しようか。終わったらお互いに見せっこしようぜ!スリーサイズは優先で見せてくれ」

とても、二十代半ばになる人とは思えない発言を繰り返す。


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