私の柔らかい部分に…-5
「えっ?もう帰るの?」
電話中の泉さんに軽く会釈すると彼は電話を中断して部屋に顔を覗かせ叫ぶ。
「中本っ!さっちゃん駅まで送ってやれよ!」
ヒロユキの歌声はまだ続く、泉さん片手でなぜか拝むふりして電話を続けていた。
中本浩二は昔のお笑いタレントと同姓同名だけど字が違う。
中本君とも悪い雰囲気ではない。
なぜか私は今夜、したくてたまらない。
飲み会だから流れによってはヒロユキと寝てあげても良かったのに…
本当にイケてないお子ちゃまだ。
中本君は親切だし、大きなバイクなんか走らせて、ワイルドだけど優しい感じだった。
今はその気になれないけど、もし上手く言い寄られたなら…
ヒロユキにざまぁみろ!だ。
「今日はバイクで来たの?」
「いや、バイクは置いて来た。」
当たり前だ…
バイクでも飲酒運転には変わりないだろう。
「あれって何ccぐらいあるの?」
後ろ手にバッグを下げて肩を軽く揺すりながら下向き加減に思わせぶって見せる。
「 750…パワーと重量が一番均等にとれる排気量なんだ。」
中本君、バイクの話をすると少年のような目をする。
「怖くないの?」
「怖いさ…怖いから頭の中空っぽにして走りに集中できる。」
意外だった。
マ〇コの熱くなった私には 750ccなんてどうでもいい事だけど、普通こんな時って女の前で見栄を張るもんじゃないの?
怖いなんて…
私は本当の正直さ
純真さに胸がきゅんと来た。
中本君の少年の目が美しく感じてしまう。
「ねぇ、男の子ってバイクと女の子どっちが好き?」
自分なりに上手く切り出した。
少し意地悪にそれとなく気を持たせてみた。
駅前通りの賑わいは夢の中に舞うホタルの群れのように私たちをすり抜けていく。