私の柔らかい部分に…-3
… … … …
「ちょっと…いいかな?」
泉さんという三十男が私を呼び寄せた。
私もこの人には悪い感情はない。
がっちりした髭面で心の奥が深くて面倒みがよくて…
若い社員には頼れる兄貴みたいな人だが奥さんがいたりする。
私は見た事がないけど、何でもたいそうな美人らしい…
もちろん私にも常日頃から優しいし、この前の飲み会の席ではわざわざ中座して駅まで送ってくれたりもした。
その時に学生時代の恋バナなんかも聞かせてくれた。
大人の男だしえばり散らすようなタイプじゃないし…
誘われたら奥さんがいてもいいかな…なんて。
「ストレートに…」
ストレート?
ストレートなの!?
「ヒロユキって…どうだ?」
「ヒロちゃん?…どうって?」
どうよ?それ…
「さっちゃんに彼氏がいるかどうか知りたいんだってさ…
アイツ…チビじゃん。
年下だし、負い目感じちゃってさ…」
あんたとなら寝てあげてもいいと思ったのに…
「あのね…人に頼む事じゃないと思う…」
ヒロユキは背が低いし年下だけど、悪くはないと思う。
この前もカラオケに行った時に耳元で囁き合ったりなんかして、悪くない雰囲気だった。
いくら泉さんがいい人でも、子供じゃないんだから…
「分かった…
じゃあ、アイツから話があったら聞くだけでも聞いてやってくれよな。
アイツかなり本気だからさ…」
聞くだけなら聞いてあげるけど、こんな事じゃハードル高いわよ。
よっぽど気の効いた言葉を探してらっしゃい…
それっきり…
当のヒロユキからは何も言ってはこなかった。