私の柔らかい部分に…-14
「はぁ…はぁ…
もうダメ…久しぶりの男をおなかいっぱい堪能したわ…」
「へぇ?…姉ちゃんみたいな美人が久しぶり?…
そりゃ嘘やろ。」
関西弁の男はセックスが終わっても陽気だった。
しばらくは動けなかったが私は服をちゃんと着て帰り支度をした。
男たちはタクシーを呼んでくれて、歩いてもさほどの距離でもないのに運転手さんにチップを弾んだ。
「遅かったじゃない…」
部屋に帰ったのは午前1時を過ぎたところだった。
私は何だか長い年月の間、遠く旅をして戻ってきたような気分でいたのに姉もまったく気にもとめない感じで、黙ってお尻を上げるとなんとも気の抜けたオナラをしたのだった。
… … … …
高橋善美という子がいた。
そういうと、私よりひとつ年上なんだけどヨシミって女の子みたいな名前を本人はとても気にしていて[ よっちゃん、よっちゃん ]と親しみ深く呼んでいる。
よっちゃんとも仲良かったが、これが私の男になるなんて自分なりに意外中の意外だった。
ヒロユキでもなく、中本浩二でもなく…
ましてや泉さんでもなく[ よっちゃん ]なのだ。
今まであまり話したというほどの記憶はない。
大阪から来た漫才コンビを二人まとめて食べてから、さすがに私の柔らかい部分はおとなしくなって穏やかな日々を送っていたのに、そのよっちゃんったらいきなり私を呼び止めて
「付き合ってくれないか?」
なんて、納品書の発行でも頼むみたいにあっさりいうのだった。
「やっぱりムリか…
じゃさ、日曜日に映画でも行かない?
俺、おごっちゃうからデートしようよ。」
工場の男たちはみんな不器用だった。
手先の技術は器用でも人間として不器用なのだ。
私がこの職場が好きなのはそれもあるかも知れない。
いつも明るい雰囲気で囲んでやらないと、生き方が不器用なのだ。
よっちゃんは名前に負けずサッパリした男らしい性格だった。
私が知ってる彼の事といえばそれぐらいのものだった。
呆気に取られてるうちに私はよっちゃんと映画を見て、食事をして…
お決まりだけど帰りには手を繋ぎあって当たり前のデートを新鮮な気分で過ごしたのだ。
よっちゃんはあまり自分の事を喋らない。
私は持ち前のお天気で場を繋ぎ合わせるように一生懸命話していた。
よっちゃんは私が語る私の当たり障りない話しを真剣に聞いてうなずいていた。