Crimson in the Darkness -出遭-W-1
『久方ぶりだな。赤毛』
「っ」
背に隠すように後ろに回したリーから息を飲む音が聞こえた。
『今宵は満月。我らには最高の晩餐となりそうだな…?』
「ふざけんな! 素直にやられると思ってんのかっ?」
威嚇……、いや虚勢か。そう叫びながら、リーは震える手でオレの袖を掴んできた。
『しかし、まだ生きていたか? 人間』
感心したように声高に言うその顔は少し怪訝そうだ。
そりゃ死んでると思うわな。オレもそう思ってたんだし。
「ああ、人間っつーのは案外しぶといんだよ」
『しぶとい、か。確かに。……が、アレほどの大ケガを負っていながら、それは…………なるほど』
何かを納得したように浮かべる笑みはどう見ても嘲笑。
「何が、『なるほど』だよ?」
ここ最近、意味の解らないコトばかりだな。コイツらとリー関わりだしてからだ。
『クククク…………そうか、そう言うことか。…………愚かだな、赤毛よ』
「っ 五月蝿い! おれは…………おれは……っ」
手の震えが止まってない。それどころか、声まで震えている。