長い夜(六)-6
キスするんじゃなかったっけ?そう思いながらも抱きしめられる心地よさとワインの酔いもあって微睡んでしまいそうになった。
真人の指が遼子のあごを、そおっと持ち上げる。
目を閉じたままの遼子の唇に真人が重なる。一瞬、柑橘系の爽やかな香りがした。真人のヘアワックスの匂いかもしれない。真人のキスは穏やかで優しい。唇を離してはまたすぐに戻ってエンドレスなキスが続く。キスしながら真人は遼子の頬を包み、鼻筋を指先でなぞり、眉を額を、その輪郭を確かめるかのように優しく撫ぜる。しばらく離れた時には遼子を目に焼き付けてるのかも知れない。目を閉じたままの遼子には分からないのだけど、視線を感じる。
甘く優しいキスが心地いい。遼子は思わず吐息をついた。
「・・・んっ・・」
「あ、いろっぽい・・」真人がすかさず反応する。
「ばか・・・。でも、真人・・・上手。・・・ちょっと、くやしい」
「上手い下手より気持ちだよ・・遼子さんが気持ちよく思ってくれてるなら、それだけで僕・・・嬉しい」そういうと、また頬を両手で挟まれた。
「あ・・すっぴん忘れてた。アップに耐えれないよぉ」真人に挟まれたまま、その上から両手で顔を隠した。
その手を掴んで離して真人がわざとじっくり覗き込む。
「童顔なんだよね、遼子さん子供みたいで可愛い」
「からかわないで・・」まだ云い終らないうちに、唇をふさがれた。
さっきより、少し激しく息も荒くなっている真人に、遼子も身を任せた。ただ受け身でいる遼子を誘うように真人が招く。真人が激しく舌を差し入れる。遼子の舌を絡めるように、真人の舌に吸い付くように促す。遼子は真人に応えた。互いが様子を伺うのではなく、互いを求め与えるキスに真人はリードした。
こんな感じ、本当にしばらく感じたことがなかった。いや、初めてかも知れないと遼子は思った。
陶酔して頭がぼーっとしていると、突然真人が遼子を離した。
「・・っつ・・!・・ってて・・・!」立ち上がったと思ったら、遼子に背を向けて何やら二三度屈伸のように膝を曲げ伸ばししている。
「どうしたの?大丈夫?」
「ごめん、タイム!終了じゃないよ?待ってて・・ちょっとだけ・・てて・・」
「なに・・あ・・・」遼子は気付いてしまった。恥ずかしくて、ちょっと嬉しかったりもした。
「バカだな、真人・・そんなタイトなジーンズ穿くからでしょ」クスリと笑った。
「チクショー・・・面目ねえ。・・・けど、治まんねえ。着替えてきていい?それとも、脱いじゃって・・」
「ダメ!」真人がいい終らないうちに遼子が笑って云った。
「いいなぁ女子は、不公平だな」真人が情けなくも不満顔で云うので遼子も同情した。
「でも、わたしもタイム。トイレ貸してね」
「おおっ、意味深!?」
「お小水ですから」
トイレから出ると、真人はスウェットの上下に着替えていた。