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長い夜
【大人 恋愛小説】

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長い夜(六)-4

「これって・・・」言葉をなくす遼子の後ろから真人が答えた。

「やっぱ、ちょっと恥ずかしいな。どう思う?」

「これ・・・私・・だよね」

次をめくっても、その次もすべて遼子の笑顔であったり、横顔だったりした。驚いたのは、自分が描かれていたことより、その才能だった。素人の見る目なので専門的な才能などと偉そうなことは云えないのだけど、ただの特徴を捉えた似顔絵などではなく、まさしく専門的に・・・よくわからないまま感動して立ちすくんでしまった。



「どんな感じ?勝手に描いちゃって怒ってる?ダメかなぁ・・」

気まずそうに真人は頭を掻いている。

「ダメだなんて!すごいよ、真人!すごい!ホント・・・」遼子は興奮して真人に抱きつき揺さぶった。

今度は真人の方がキョトンとしている。

「知らなかった。本物だわ、真人!驚いた こんなに才能あるなんて」

「え・・ほんとに?気を悪くしなかった?」

「悪いどころか、そりゃ・・・私の絵だっていうのにはビックリだけど、上手だわ。素人の私がいっても何だけど、ううん、芸術は感性も大事だよね?感動だわ!」



真人は大きく息を吐き出して、安堵した様子で言った。

「よかった。実は今日、お願いもあったんだ」

「私に?何?」

真人は遼子をソファに腰掛けるように促して、自分も隣に座り、向かい合うように姿勢を正して云った。

遼子も真剣な眼差しで真人の話に耳を傾けた。

「前にもさ、遼子さんを描きたいって、云ってたでしょう?」

遼子は、ああ、と思い出して、うなずいた。



「でね、本格的にお願いしたい」

「私を・・・」少し困惑した表情でつぶやいた。

「練習っていうか、僕の記憶の遼子さんを描いていて、やっぱり遼子さんを描きたいって確信したんだ。実は、この夏に締め切られる公募に出品したい。入賞したら、奨学金としてイタリアに半年の留学が約束される。行きたいんだ。行っていろいろ見てきたい。そのチャンスを掴むには、全力で気持ちを込めて描けるのは、遼子さんしかない・・・って。お願い、遼子さん」



「まさか・・・裸とか?」

「正直、全体のイメージ捉えたい。でも、無理は云いたくない」

様子を伺うようにのぞきこもうとした時に、あっ!と、遼子が思い出したように声を上げたので、真人は驚いた。


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