唯高帰宅部茜色同好会！（第三章）-3
「あと、やっぱり負ける前提でやってるのじゃなくて、本気で頑張ってる姿を応援したいじゃない」
「……なるほどね」
そりゃあ男だし、女の子にそう言われるとやる気だって出る。
マリィの言うとおり、負けるのを前提でやっても面白くないし、大事な仲間であるこの女性陣にそんな情けない姿を見せたくない。
ちらりと隣を伺うと、キスケとユーリも真面目な顔になっていた。
「……でも限りなく難しいぞ、野球は」
俺は立ち上がると、黒板に野球場の絵を描いていく。
「俺達三人を満遍なく配置すると、外野に一人、内野…まあとりあえずショートに一人、あと投手が一人って感じだが」
それぞれのポジションに黄色のチョークで丸をつけた。
「ここ以外にボールが飛べば違う意味でアウトだ。下手でもやる気があるやつならまだいいが、やる気のないやつだと真面目にボールも追わないだろうし」
青いチョークを使って打球を矢印で表した。
「アッキュ、詳しいですね。野球経験者ですか？」
「野球ってのは、男なら一度はやるもんなんだぜ。特にアッキュは野球やるのも見るのも好きみたいだしな」
「そうなんですか」
「……じゃあ仮にキスケが外野だとしたら、外野にきたボールは全部キスケが捕ればいいじゃない」
マリィが腕を前で組んで言った。
「無理だ」
お前は野球を見たことないのか？
「ふーん…たしかに野球だと勝つのは難しいのね」
マリィも話を聞くと、最初とは打って変わったように険しい顔になった。
「…ま、どうせクラスのやつらは今年も俺達三人に任せっきりだろうし、結局は俺達で勝ちを狙うしかないな」
「アッキュン、やる気になった？」
「ああ、燃えてきた」
どうせなら、勝ちたい。