「熟女と内気な高校生」-10
くるおしく悦びの声をあげながら、長く長く、信じられないほど長く二人は愛し合った。やがて二人は同時に頂点に達し、静かに落ちていく。
田中は淳子の繩をほどき、果ててしまった事を惜しむかのように、お互いの乳首を、性器を、そして唇をいつ終わるともなく両手でまさぐり合う。
暗闇の中、静寂な時が訪れ、夜はふける。そして気が付くと、まばゆいばかりの朝日が、淳子の体を包んでいた。
体を起こそうとすると、田中が必死に胸にしがみついていて、無邪気な顔ですやすやと寝息をたてている。それはまぎれもなく自分の息子と同い年の少年だった。幼い頃から母親の愛情に飢えていたであろう田中が、自分の乳房にしがみついて眠る様子に、淳子は心から愛しさを感じた。しかしその反面、天国にいるはずの夫が、田中の体を借りて淳子を訪ねて来てくれた、そう信じて疑わなかった。
例年以上に暑かった夏も終わり、秋風が心地よい季節になった。
朝から秋晴れの日曜日、たまたま部活のない健一を引っ張り出して、淳子は買い物に出かけた。二人で外出するなんて久しぶりだ。
健一の話によると、二学期が始まってから田中は人が変わったように明るく陽気になり、女生徒とも積極的に話をするようになったそうだ。
二人で河原の土手を並んで歩くと、淳子よりもはるかに身長が高くなってしまった健一はなんとも頼もしく見え、淳子は大変気分がよかった。
「あれ、前からくるカップルの男の方、あれ田中じゃねぇか?」
健一が目を凝らして指さした。
「え?どれどれ?」
淳子も前からくる二人連れを注視する。間違いなく男の方は田中だ。横にずいぶん可愛い女の子を連れて楽しそうに話している。やがて向こうもこちらに気付き、手を振りながら走ってきた。
「こんにちは。お久しぶりです。」
田中はにこやかに挨拶をした。
「ずいぶん可愛い彼女が出来たじゃない。」
淳子がからかうと、田中は照れ臭そうに頭をかいた。
「ちょっと。」
淳子は田中の袖を引っ張り、健一に声が届かない所まで離れてヒソヒソ声で話しかけた。
「まさかあの子を縛ったりしてないでしょうね。」
「まさか!まだ手も握ってませんよ!」
田中は真っ赤な顔をして怒鳴った。
「ふふふっ、大事にしてあげなさいね。」
「はい。みんなおばさんのおかげです。」
田中はペコリと頭を下げて、彼女の方へ走って戻っていった。
「ねえ、あいつと何を話してたの?」
健一が不思議そうな顔で尋ねる。
「何でもないわよ。」
淳子はこみあげる含み笑いをこらえながら、軽い足取りで土手の上をスキップした。
「変なの。」
健一はまだ不思議そうな顔をしている。淳子にとって、最高に気分のいい秋の一日だった。
それから後も、田中はよく家に遊びに来た。以前よりも数倍明るくなった田中は、よく喋り、そして前と同じように淳子の手料理をうまそうによく食べた。淳子と肌を合わすような事は二度となかったが、淳子は健一と同じくらい、この田中を可愛がったそうだ。
−完−