202号〜荒井恵美-3
ガチャ、ガチャガチャ―――
「あれ、鍵を掛けてる……? 太郎〜? 開けてよ〜!」
「やだッ! 僕、いま深く傷ついてんだから!」
「ごめ〜ん、おばちゃん、謝るからさ〜。ねっ、だから開けてちょうだい」
「ヤダッたらヤダッ!」
「ちょっと〜、あんたに出てきてもらわないと困るのよ〜。私、今夜は帰れないんだから〜」
「…………」
「太郎の言うこと何でも聞いてあげるから、ネッ、ここを開けて」
「……恵美おばさん、今夜ここへ泊るの?」
「うん、そうしようと思ってるんだけど、あんたが出て来ないんじゃ困っちゃう」
「……恵美おばさん」
「んっ……何ッ?」
「本当に何でも言うことを聞いてくれる?」
「うんうん、聞いてあげる! だから開けて頂戴」
カチャ―――
暫くしてからドアが開き、太郎は真っ赤な顔でボ〜ッと私を見つめながらベッドへ腰を下ろしました。
「恵美おばさん、そこへ立って」
「んっ? はいはい、ここね」
私を目の前に立たせ、何かモジモジしている太郎。
「太郎ちゃん、機嫌直してよ〜、おばちゃんさ、さっきのこと謝るから」
「……脱いで」
「えっ……何? よく聞こえなかったんだけど、何て言ったの?」
「服……服を脱いでって言ったの」
一瞬、言葉の意味が分からずにキョトンとしましたが、再度太郎から促され、ようやく何を言っているのかを理解しました。
て言うか、軟弱な甥っ子の意外な要求に、酔いがサーッと引きました。
「ぬ、脱ぐ? 脱ぐって、あんた……何? 裸になれってことなの?」
「う、うん」
「な、なによ、あんた……おばちゃんの裸が見たいの?」
「う、うん」
先程までの蕩蕩とした眼とは違い、どこか血走ったような力強い眼で大きく頭を縦に振ってくる太郎。
それが真剣であることは酔った私でもすぐに分かりました。