302号〜立花由佳-5
「山田くん、彼女はいないの?」
「は、はい、いません」
「そ、そう。でも、今までに一人くらいは付き合った人いたんでしょ?」
「い、いえ……そ、その……女性と付き合った経験はありません」
まあ、予想通りの答えでした。
「ぜんぜん? 一人も?」
「は、はい。じょ、女性と手を触れたのも小学生のころ以来です。で、でも……」
「でも?」
「す……んん……す、す、好きな女性の手に触れたのは、きょ、今日が初めてです」
言ってすぐに俯く山田くん。
その顔は茹ダコのように真っ赤でした。
恋心を前面に押し出してくる山田くんを前に、いっそうドキドキと高鳴っていく胸。
「あ、あのさ、こんな質問して、変なオバサンって思わないでくれる?」
「オ、オバサンだなんて、とんでもないです! た、立花さんはすごく綺麗で、そ、その……う、美しい人です」
「あっ、ありがとう」
綺麗とか美しいとか、異性にそう言ってもらえたのは何年ぶりだろう。
もうこの瞬間に、私の理性の箍は外れていました。
「山田くん、単刀直入に聞くけど、これまでに女性と付き合った経験がないってことは……その……童貞ってこと?」
「へっ!?」
「あ、いや、そうなのかな〜と思って」
「あ、あの……そ……そ、そうです」
「じゃあ、我慢出来ないときはどうしてるの?」
「ど、どうしてるのって言われても……そ、その……」
「エッチな本っていうか、その類のビデオとかを観て……なんていうか、一人でやってるの?」
質問する声が、自分でもハッキリと分かるくらい上ずっていました。
また、激しさを増していく動悸が女の芯の部分を刺激しはじめ、私は熱く火照りだしていく股間を思わず両手でキューッと押さえ込みました。
「そ、それは……」
とんでもない質問を受け、まるで亀のように丸くなっていく山田くん。
「こ、こんなオバサン相手に恥ずかしがらなくてもいいよ。ごめんね、変なこと聞いて」
「た、立花さんはオバサンじゃありません! ぼ、ぼ、僕にとっては女神のような人で……す、凄く素敵です。憧れの女性です」
丸めた上背から顔をひょこっと突き上げ、その言葉が本心だということを眼が力強く訴えてきました。