恋を知りたい-3
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放課後---
「おい」
席を立って荷物をまとめた姿勢のまま、ぼうっとしていると、突然声をかけられた。
「え、こんにちは…あっ。」
いつの間にか目の前にいた人に反射的に挨拶をして、つい口を丸く開けてしまった。
『本当に高橋先生のこと、好きなんだ?』
この間の------
「こんにちは、畑本さん。」
「なんで…名前知ってるの?」
「学生の名前なんて、知りたければ調べるまでもなく分かるから。」
自慢気に言った。
「はぁ、そうなん、」
「俺、竹田俊哉。
詩織ならトシちゃんって呼んでもいいけど?」
彼は言葉を遮り、身を乗り出す。
机を挟んで、顔の距離が近づく。
つい上半身を反らせて後ずさった。
「た、けだ君…なんで呼び捨て、なの?」
「や、その困惑した顔が可愛いんだよなー。
チューしていい?」
「え、いやです。」
「うわっ!傷つくー。」
竹田君は何か物が当たったみたいに胸を押さえて、大袈裟によろけた。
大丈夫ですか、と声をかけそうになってしまう。
「だ、だって…」
「…『先生じゃなくちゃ、いやだ』?」
「えっ…?」
私が顔を上げると、竹田君が冷たい瞳で笑った。
「詩織って、ほんと高橋が好きなんだな。」
「………。」
なんだかその視線に耐えられなくて、私は黙って目を逸らした。
"教師相手に本気になってる"
その瞳が、そう言ってる気がした。